ジャスト 6.5 闘いの証 (原題:Just 6.5)

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監督・脚本:サイード・ルスタイ
出演: ペイマン・モアディ、 ナヴィッド・モハマドザデー、 ファルハド・アスラニ、 パリナーズ・イザドヤール

街にあふれる薬物依存者の多くはホームレス。薬物撲滅警察特別チームの一員であるサマドは、薬物売人の頂点に立つ大物ナセル・ハグザドを追っている。あの手この手の操作を繰り返したあげく、ついにナセルを彼のペントハウスに追い詰め刑務所に収監する。しかしそれは、ほんの始まりに過ぎなかった。

本作と『ウォーデン 消えた死刑囚』は、¨イラン2大傑作犯罪映画¨と銘打ち、同時公開される。それにしても、自国の暗部を剥き出しにした作品が、喜劇を除いたイラン映画史上最大のヒット作とは驚く。イランの人々は社会派の映画を好むのだろうか?もちろん本作は多くの観客を惹き付ける娯楽性も十二分に持ち合わせている。冒頭から疾風怒濤、フルスロットルのチェイスシーンに先ず度肝を抜かれた。影で映った対象が次第に実相となり、角角を曲がってフェンスを飛び越える。縦横無尽に 躍動するカメラ。 土を巻き上げるトラクター。追いつ追われつなどという表現が陳腐に思える程の疾走感を見せた後で、やっとタイトル…。

と、今度は主要キャストの超絶早口マシンガントークによる台詞の応酬合戦が始まる。警察官同士の口論、指揮を執る口上。ドラッグディーラー、運び屋、家族、関係者などに対しては、反論の隙も与えない激しい尋問。相手が女だろうがお構いなし。
「亭主は何処だ?!嘘をつくな!」「お前が花嫁になる夢を打ち砕いてやるぞ!」
一気呵成にまくし立てる迫力の恐ろしさに震え上がってしまう。
これは警察視点によるリアル捕物帖なのか?と思いながら観ていくと、途中から主客が入れ替わる。中盤から大物売人の視点となるに連れ、更に臨場感を増幅しつつ血潮漲る熱いドラマが立ち上がるのだ。

犯罪ものの域を凌駕したスケール感、映画に強いフィジカルを帯びさせたサイード・ルスタイ監督は、撮影当時30歳。これが2作目だという。作家性、娯楽性、社会性、豊かな表現力を伴った有望株が世界へ向けて高らかに発信した渾身作。ジャンルの枷を飛び越え、膂力を感じさせる必見のイラン映画である。(大瀧幸恵)


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2019 年∕ 131 分∕ 1.85:1∕イラン
配給:オンリー・ハーツ
後援:駐日イラン大使館文化参事室
©Iranian Independents
公式サイト:http://just6.5andwarden.onlyhearts.co.jp/
★2021年1月16日(土)より、新宿K’s cinema 他にて公開
posted by グランマゆきえ at 23:36Comment(0)イラン

ウォーデン 消えた死刑囚 (原題:The Warden)

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監督・脚本:ニマ・ジャウィディ
出演:ナヴィッド・モハマドザデー、 パリナーズ・イザドヤール

1966 年、イスラム革命前のイラン南部にある刑務所。新空港建設のため立ち退くことになり、所長のヤヘド少佐は、囚人たちを新しい刑務所へ移送する任務を背負うことになった。無事、任務を果たせば大きな出世を約束されており、それは彼にとって難しいことではないと思われた。ところが一人の死刑囚が行方不明との報告が届く。所外への脱走はあり得ないと判断した少佐は所内の徹底した捜索を決意する。事情を聴くために死刑囚を担当していたソーシャルワーカーを呼び寄せるが、美しく聡明な彼女に以前から少佐は惹かれていた。正義とは何か、良心とは? キャリアだけを追いかけてきた少佐はおそらく初めてその問いに直面する。

7年前、ニマ・ジャウィディ監督の長編デビュー作『メルボルン』が東京国際映画祭で上映された際、監督に取材する機会を得た。ある場面について、どうやって撮ったのか?質問したところ、
「それは、ヒミツ!」
とイタズラっぽく答えた後のチャーミングな笑顔が忘れられない。
本作を含め、2本を観た限りでは構築的な作品を撮る印象がある。そして、不穏な空気の醸成も巧みだ。冒頭、大雨に打たれる絞首刑台、アンテナ撤収作業の上を飛行機が飛び去って行く。雨が滴る音、飛行機の轟音…。仄暗い映像と音響が相乗効果となり、実景を捉えながら具象性を纏った力に引き込まれる。

カメラが刑務所内部へ入り、甘い「ある夜のこと~♪」が流れる中、人間が主軸となったドラマが躍動的に動き始めてからは、映画は一気にサスペンスタッチと化す。栄転異動の所長、後任として昇進を約束され興奮を隠せない少佐、恙無く実務を遂行する任官たち。逃げた死刑囚を巡り、様々な人々の思惑が飛び交う。

そして、いつしか舞台は雨から乾いた大地へと転調し、異化効果を生んでいることに観客は気付くのだ。少佐が組織共同体の掟を越えて選択した結果と、当事者を一切登場させない話法を採った監督がリンクし始める。2つが絶妙に重なり合い、感動的な終焉に繋がった。(大瀧幸恵)


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2019 年∕ 90 分 ∕1.85:1 ∕イラン
配給:オンリー・ハーツ
後援:駐日イラン大使館文化参事室
©Iranian Independents
公式サイト:http://just6.5andwarden.onlyhearts.co.jp/
★2021年1月16日(土)より、新宿K’s cinema 他にて公開
posted by グランマゆきえ at 23:19Comment(0)イラン