監督:トム・ムーア、ロス・スチュワート
音楽:ブリュノ・クーレ、KiLA、オーロラ
声の出演:オナー・ニーフシー(ロビン)、エヴァ・ウィテカー(メーヴ)、ショーン・ビーン(ビル)、マリア・ドイル・ケネディ(モル)
サイモン・マクバーニー(護国卿)
(日本語吹き替え版)新津ちせ(ロビン)、池下リリコ(メーヴ)、井浦新(ビル)
中世アイルランドの町キルケニーでは、人々が森に住むウルフウォーカーについてひそかに囁き合っていた。少女ロビンはオオカミ退治のため、イングランドからハンターの父と共に、キルケニーにやって来る。ある日、父の後を追いかけて森に入った彼女は、人間とオオカミが一つの体に共存し、魔力で傷を癒やすヒーラーでもあるウルフウォーカーのメーヴと出会い、仲良くなる。
『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『ブレンダンとケルズの秘密』に続く、トム・ムーア監督が送る”ケルト3部作”の完結編である本作は、人間と自然の共生を理想として謳い上げた詩情豊かなオーケストレーションだ。画面から、匂い、風、光、空気、大地の音が伝わってくる。森と街を対比した鮮やかな色彩、手描き水彩アニメーションは躍動感に溢れ、観客を中世の世界へと誘う。
1650年アイルランド、 キルケニー。英国からやってきた少女ロビンはハンター志望。英国にいた時のように外へ出たくて堪らないが、父から堅く止められる。
「外は狼だらけだ。城壁から出るな」
映画はロビンを抑圧の象徴として描く。ハンターは男の仕事、女は掃除や家事をしろ、子どもは街の外に出てはいけない。自由を渇望するロビンが羽ばたく瞬間を観客は待ち望む。
ロビンが森で出会う少女メーヴこそ、人間と狼が一つの身体に共存した「ウルフウォーカー」だった。夜、ロビンの身体は幽体離脱し、狼となって2人が森を自由闊達に走り、飛び回る時の解放感!ジブリアニメを想起させる楽しさ、高揚感、ダイナミックでマジカルな世界が広がる。ウルフウォーカーは、魔法を用い、傷を癒すヒーラーでもあるのだ。ロビンの傷を、観客の心をも癒してくれるメーヴ。だが、人間たちにより森は縮み続け、狼は狩猟の対象となってしまう。
アイルランドでは1786年を最後に狼は絶滅した。古代ケルトの人々は狼を人間より強い生き物と捉え、尊敬の念をもって接したという。自然界では全ての生命に対して謙虚であれ…、トム・ムーアが本作に込めたメッセージのような気がした。(大瀧幸恵)
2020年製作/103分/G/アイルランド・ルクセンブルク合作
配給:チャイルド・フィルム
後援:駐日アイルランド大使館
(C) WolfWalkers 2020
公式サイト:https://child-film.com/wolfwalkers/
★2020年10月30日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
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