461個のおべんとう

原作:渡辺俊美
監督・脚本:兼重淳
脚本:清水匡
出演:井ノ原快彦、道枝駿佑、森七菜、若林時英、工藤遥、阿部純子、野間口徹、映美くらら、KREVA、やついいちろう、坂井真紀、倍賞千恵子

離婚した鈴本一樹(井ノ原快彦)は、15歳の息子・虹輝(道枝駿佑)を巻き込んだことに罪悪感を抱いていた。やがて、一度は失敗した高校受験に合格した虹輝は、昼食を買うのではなくおべんとうを父に作ってほしいという。二人は「3年間、毎日おべんとうを作る」「3年間、休まず学校へ行く」という約束をする。こうして一樹のおべんとう作りが始まった。

「TOKYO No.1 SOUL SET」でギター、ヴォーカルを務める渡辺俊美の実話を基にしている。「これは毎日のお弁当の話だ。それ以上でも、それ以下でもない」…。冒頭、15歳の息子・虹輝(道枝駿佑)の言葉で始まる本作は、実は”毎日のお弁当”以上のものを観客に伝えてくれる心温まる佳編だ。思春期の男の子ほど扱い辛い生きものはない!という体験的自論を持つ身としては、25年前を振り返り、甘酸っぱい気持ちで胸がいっぱいになった。卑近な例で恐縮ながら、我が息子と比べれば虹輝くんは何と素直なこと!学校からの呼び出しもなければ、粗野な言動・行為もしない。ゲーム好きの引っ込み思案体質は、ミュージシャンで「何とかなるさ〜」的ラフ且つレイジーな父親を反面教師としているのかもしれない。扮する道枝駿佑の女の子と見紛う容姿、長い手足のマイルドさ加減も影響していると思うが、反抗期の男子はこんなものではない。

そして、井ノ原快彦が好演する父親は二日酔い明けでも創意工夫を駆使したお弁当を拵え、男同士の約束を守ろうとする。見どころが多いのも本作の特長だ。お出汁や調味料、季節の素材(桜海老やニラ、パプリカなど)、彩りにもこだわった卵焼きは1日とて同じ味はない。

父のバンド仲間、KREVA(嬉しい共演♪)らとのライブシーンがこれほど多いとは予想していなかった。オリジナル曲を使用したライブには渡辺俊美がカメオ出演し、楽しいムードを盛り上げている。レコーディングスタジオでのバンドのやり取りがアドリブだったと後で知り、驚いた。20周年を迎えたバンドという設定を自然な雰囲気で醸し出している。

そんなリラックスした現場から、演者陣の持ち味を引出したのは、『キセキ あの日のソビト』でミュージシャンを、『泣くな赤鬼』では高校野球を題材にした兼重淳監督。美味しい映画を作ったものだ。(大瀧幸恵)


2020年製作/119分/G/日本
配給:東映
製作プロダクション:ジョーカーフィルムズ
製作幹事:ハピネット
(C) 2020「461個のおべんとう」製作委員会
公式サイト:https://461obento.jp/
★2020年11月6日(金)から全国公開




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