ホテルローヤル

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監督:武正晴
原作:桜木紫乃
出演:波瑠、松山ケンイチ、安田顕、余貴美子、原扶貴子、夏川結衣、伊藤沙莉、岡山天音

北国の湿原を望むラブホテル「ホテルローヤル」経営者の一人娘・田中雅代(波瑠)は受験に失敗し、渋々実家の仕事を手伝うことになる。アダルトグッズ会社の営業・宮川聡史(松山ケンイチ)に思いを寄せながら、告白することなく淡々と仕事をこなす間にも、ホテルにはさまざまな境遇の男女が訪れる。ある日、ホテルの一室で心中事件が起こり、さらに父・大吉(安田顕)が病気で倒れてしまう。

北海道、釧路。閉鎖されたラブホテルを探索しているカップルが、朽ち果てた部屋の鏡を撮影すると、ホテルが辿った過去が鮮明に蘇ってくる。本作の主役は「ホテルローヤル」なのだ。2時間3800円で充たされる場所に集う人々の人間模様が、『百円の恋』『全裸監督』などの武正晴監督によって、丁寧にノスタルジック調に紡がれて行く。
清掃係のおばちゃんたち、札幌の美大受験に失敗し、仕方なく家業のホテルを手伝うことになった娘、アダルトグッズを”リアルに”説明をしていると「年頃の娘さんの前ですみません」と謝る誠実な営業マン。
地下のボイラー室で食事をしていると、漏れ聞こえてくる◯◯な声、物音。仕送りの手紙
を読み聞かせ、一向に帰省しない息子の写真をかざすおばちゃん。ホテルを裏から支えるスタッフの日常を描く視線が優しい。

甲斐性のない父を演じる安田顕、アダルトグッズ営業マン役の松山ケンイチ、妻に裏切られ、女子高生(伊藤沙莉)と滞在する高校教師の岡山天音など、不思議に男優陣に息が吹き込まれているように感じた。
父が病に倒れ、ホテル事業、自分自身と向き合っていく娘、10年の月日、両親の回想シーンなど、静かな中にも転変に富んだ物語を葛折りのように編んだ演出が好感を齎す佳編である。
(大瀧幸恵)


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2020年製作/104分/PG12/日本
配給:ファントム・フィルム
製作:「ホテルローヤル」製作委員会
(C)桜木紫乃/集英社 (C)2020映画「ホテルローヤル」製作委員会
公式サイト:https://www.phantom-film.com/hotelroyal/
★11月13日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

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