監督・脚本:セドリック・クラピッシュ
出演:アナ・ジラルド、フランソワ・シヴィル
パリで暮らすメラニー(アナ・ジラルド)とレミー(フランソワ・シヴィル)は、隣り合うアパートに住んでいたが、それ以外の接点はなかった。別れた恋人のことが忘れられないメラニーは、がんの免疫治療の研究者として多忙な日々を送る一方で、一夜限りの関係を繰り返していた。一方、倉庫で働くレミーは同僚が解雇される中、自分だけが昇進することに後ろめたさとストレスを感じていた。
現代のパリを撮らせたら右に出る者なしのセドリック・クラピッシュ監督!『スパニッシュ・アパートメント』『ロシアン・ドールズ』『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』の〝青春三部作″、『おかえり、ブルゴーニュへ』から3年。待ちに待った新作だ。冒頭、軽快な音楽を背景に、パリの地下鉄、空撮からの街並み、ショーウィンドウ、 早回し撮影で都会の人混みを強調した描写だけで、仏映画好きの血が騒ぐ。多くの人が行き交う中、隣合う男女2人。お互いのことを未だ何も知らない主人公たちだ。
免疫治療の研究者として顕微鏡を覗くメラニー。マッチングアプリで一夜限りの相手を探し、出会いを繰り返すも不全感からか、いつも眠くて堪らない。巨大倉庫で働くレミーは、同僚たちが解雇される中、自分だけ昇進異動する罪悪感とストレスで、こちらは不眠症。
2人とも30歳。現代人特有の孤独と悩みを抱えつつ、精神科で心理療法を受診している。
家族、友だち、仕事、日々の買物、そしてクラピッシュ映画に欠かせない猫ちゃんも含め、2人の変わり映えしなさそうで何かを待っている生活を淡々とスケッチする話法。観客を飽きさせず、最後まで興味を繋ぐ演出は、簡単なようで難しい。熟練のクラピッシュ監督ならではだ。時折、句読点のように挟まれるパリの街並み、朝焼け、アパートメントのバルコニー、屋根屋根、エスニック食品店などなどがアクセントとなって楽しい。
いったい2人はいつ、どこで交わるの?その出会いはどうなるの?まるで我がことのようにハラハラする自分に気づく時、すっかりクラピッシュ映画の世界に取り込まれているのだ。
観終わった後は幸せ気分に浸れること請け合い!
個人的には、大好きな俳優イポリット・ジラルドの面影を残す娘が、30歳に成長したのか…、と長い映画鑑賞歴を振り返り、ため息をついた。(大瀧幸恵)
2019年/フランス/111分/
提供:木下グループ
配給:シネメディア
公式サイト:http://someone-somewhere.jp
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★12月11日(金)より、 YEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテほか全国順次公開
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