監督・脚本:テレンス・マリック
製作総指揮:ケン・カオ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
美術:ジャック・フィスク
衣裳デザイナー:ジャクリーン・ウェストー
音楽:ローレン・マリー・ミクス
出演:ルーニー・マーラ、ライアン・ゴズリング、マイケル・ファスベンダー、ナタリー・ポートマン、ケイト・ブランシェット、ホリー・ハンター、ベレニス・マルロー、ヴァル・キルマー、リッキ・リー、イギー・ポップ、パティ・スミス、ジョン・ライドン、フローレンス・ウェルチ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
音楽の街として知られるアメリカ・テキサス州のオースティン。フリーターのフェイ(ルーニー・マーラ)は有名プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダー)と内密に交際しているが、そんな彼女に売れないソングライターのBV(ライアン・ゴズリング)は恋心を抱いていた。その一方で、ゲームのように恋愛を楽しむクックは夢を諦めたウェイトレスのロンダ(ナタリー・ポートマン)を口説く。それぞれに幸せを求め、誘惑と裏切りに満ちた世界を生きる4人の人生が重なり合う。
テレンス・マリックの作品には、監督の烙印が押されているかのようだ。独特のスタイルは本作でも終始”スタンプ付き”である。ハリウッド的なドラマツルギーを大きく逸脱し、起承転結すらない。
オスカーを3度受賞したエマニュエル・ルベツキのカメラは、登場人物に寄り添い、まるでダンスをするように自在な動きを見せる。句読点の如く現れる鳥の群れを仰ぎ見るアングルは、人間たちを睥睨する神の視座を象徴しているかのようだ。光に向かい、光を背にし、空気や風の音、湿度まで伝えようとする透明感溢れる映像に圧倒される。
逡巡する女と男。罪の意識、魂の彷徨、目眩く感情の移り変わりを独白とも会話ともつかぬ台詞が連なる響きは、新しいスタイルの音楽劇か。
本作でマリックが舞台に選んだのは、米国テキサス州オースティン。音楽の街だ。一年中、様々な音楽フェスが開催され、ライヴハウスやスタジオが軒を連ねる。音楽を生業とする2人の男、歌の世界に進路を求めた女は、2人の男の間で揺れる。冒頭から断片的に挟まれる臨場感溢れる躍動的なフェスのシーン。登場人物の前に現れる様々な(本当の)ミュージシャンたち。
パティ・スミス、スウェーデンのリッキ・リー、ジョン・ライドン(セックス・ピストルズ)、イギー・ポップ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズらが本人役で出演するのだから贅沢な布陣だ。
ミュージシャンたちが繰り広げる現代のラヴストーリーなのだが、比重が置かれているのは恋愛のほうだったのかもしれない。ルーニー・マーラ、ライアン・ゴズリング、マイケル・ファスベンダーが”仕事”をしている場面は意外なほど印象に残らない。3人に絡んで恋愛模様を繰り広げるナタリー・ポートマン、ケイト・ブランシェット、ベレニス・マルローが、少ない出演場面ながら、存在感と光彩を放っているのは、マリックの演出マジックだろう。
成功した富裕なプロデューサーを演じるマイケル・ファスベンダーとの関わりを通し、人生に於ける挫折、裏切り、本当の愛、新しい世界に歩みだして行く彼ら。マリックの新作は思いの外、古典的な恋愛・音楽映画だった。(大瀧幸恵)
2017年/アメリカ/128分/英語/シネスコ/PG12
提供:キングレコード、AMGエンタテイメント
配給宣伝:AMGエンタテインメント
© 2017 Buckeye Pictures, LLC
公式サイト:https://songtosong.jp/
★12月25日(金)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
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