ファーストラヴ

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監督:堤幸彦
脚本:浅野妙子
原作:島本理生『ファーストラヴ』(文春文庫刊)
出演:北川景子、中村倫也、芳根京子、窪塚洋介

アナウンサー志望の女子大生、聖山環菜が父親を刺殺する事件が発生。環菜のドキュメンタリー本の執筆を依頼された公認心理師の真壁由紀(北川景子)は、面会や手紙のやり取りを重ね、環菜の周囲の人々を取材する。環菜に自身の過去を重ね合わせた由紀はやがて、心の奥底にしまっていた記憶と向き合うことになる。

非常にセンシティブな内容の映画だ。少女から女になる時の端境期には誰しも経験があるだろう、あの早く忘れたい、おぞましく唾棄すべき記憶を否が応でもスクリーンを通し、突きつけられる。
「殺人犯は、あの頃の私と同じ目をしていた」という主人公の印象的な独白は、ピーター・シェーファーによる戯曲『エクウス(馬)』を想起させる。本作も心理学者と容疑者の対決劇といったシアトリカルな展開も可能だったはずだ。「あの目から解放されるには、殺すしかなかった」…。
複雑且つ多義的な主題を堤幸彦監督はスター俳優たちを素材に、現代人が持つ闇を分かりやすいエンターテイメントとして掘り下げた。原作者・島本理生も「堤監督ならではのエンターテイメントにしてほしい」と希望していたそうだ。

冒頭、殺害現場となる建造物を俯瞰で捉えるドローンショットから、建物の窓まで導くカメラワークに続き、リクルートスーツの容疑者が呆然と歩く姿を横から撮った場面。不穏さの醸成には息を呑んだ。だが、堤監督や周囲のスタッフもは心理学を土壌とした対話劇ではなく、エンタメ作品を目指したのだ。主人公、容疑者と似たような体験を持つ観客には、スター俳優らが際立つ娯楽作品を選択したことをどう受け止めるべきか?答えは難しい。
一生、消え得ない傷を負った主人公、容疑者には、安易なエンディングだったように映った。芳根京子の憑依的名演、中村倫也と窪塚洋介の自然体演技、短い出番ながら苦脳を表現した石田法嗣ら演者陣の健闘、ワンカット長回し撮影で呼吸を途切らせないスタッフワークなど、観るべき場面が多かっただけに惜しまれる。
(大瀧幸恵)


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2021年製作/119分/G/日本
製作:『ファーストラヴ』製作委員会 
制作:角川大映スタジオ/オフィスクレッシェンド
配給:KADOKAWA 
Ⓒ2021『ファーストラヴ』製作委員会
公式サイト:http://firstlove-movie.jp
★2021年2月11日(木・祝)より、全国公開

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