監督:ロッド・ルーリー
脚本:エリック・ジョンソン、ポール・タマシー
撮影:ロレンツォ・セナトーレ
編集:マイケル・ドューシー
音楽:ラリー・グループ
出演:スコット・イーストウッド、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、オーランド・ブルーム、ジャック・ケシー、マイロ・ギブソン
アフガニスタン北東部にあるアメリカ軍のキーティング前哨基地は補給経路の要とされていたが、四方を山に囲まれた谷底に位置し、標的にされやすい弱点があった。タリバンの襲撃の度に誰かが命を落とす過酷な環境の中、同基地に派遣されてきたロメシャ2等軍曹らは、圧倒的多数の敵に囲まれる不安と戦いながら任務に当たっていた。2009年10月3日早朝、300人以上のタリバン戦闘員が総攻撃を仕掛けてきて、わずか50人ほどのアメリカ兵は絶体絶命の危機に陥る。
米国発のミリタリー・アクションものには一定の先入観があった。国粋主義映画か、作り手の快楽が加味された無為な暴力描写か、派手な仕掛けの軍事ヲタク向けか、偽善主義?…。米国視点であることは揺るぎないが、本作は上記の何れにも該当しなかった。戦争によって奪われた若い生命への鎮魂歌。感傷を排した泥臭い演出に好感が持てる。ノンフィクション小説に基付いた実話であり、登場人物たちも全て実名で紹介される。
2009年、タリバンの本拠地であるアフガニスタン。絶望的に不利な状況下に於いて、54人の兵士たちが如何にして300人超のタリバン戦闘員に立ち向かったか。アフガニスタンで最悪の戦闘と言われたヒンドゥークシュ山脈のキーティング前哨基地(アウトポスト)は、四方を険しい岩山に囲まれた谷底だ。包囲されれば格好の的となる。国の愚かな軍事的意思決定を本作はイデオロギーは語らず、映像面から批判している。
冒頭、人物紹介風に始まる機内での会話から、スラングが多発する台詞には、ベトナム戦争を描いた『プラトーン』の場面を想起させるリアリティだ。夜半、到着した兵舎内をカメラは舐めるようにワンカットで”説明”してみせる。
「こんな岩だらけのとこで死ぬのかよ」「ブラックコメディだぜ」
「お前、チャック・ノリスと寝るんだろ?」「死にたくねぇ!」
「F」の頭文字が付かない台詞はない。
そんな軽口を叩いている側から、 攻撃・発砲を受ける。軽口〜攻撃、兵士の怪我や死…。映画はその連続を無限ループのように繰り返す。ここではそれが日常なのだ。
やれ、装填弾が違うと口論になる。「撃たれそうになったじゃねぇか!」
各々が自由に不規則発言し、仲間割れも起こる。
「戦闘中の口論は禁止だ」とオーランド・ブルーム扮する年嵩の大尉から注意勧告を受ける兵士。
後から分かることだが、その大尉でさえ27歳。多くの兵士は21歳の若さで散って行った。戦闘後、基地の脆弱性が露呈し、多くが閉鎖されたという。 アフガニスタン史上最多の叙勲者を出した事実など、兵士にとってはどうでもよいことだろう。戦場では生き抜くこと、後世に伝える行為こそが正義なのか、と問いかけているようだ。
(大瀧幸恵)
2020年/アメリカ/カラー/123分/シネマスコープ/英語ほか/5.1ch
配給:クロックワークス
(C)2020 OUTPOST PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://klockworx-v.com/outpost/
★2021年3月12日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開
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