レッド・スネイク (原題:Soeurs d'armes 英題:Sisters in Arms)

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監督・脚本:カロリーヌ・フレスト(長編初監督)
出演:ディラン・グウィン『ドラキュラ ZERO』、アミラ・カサール『不実な女と官能詩人』『君の名前で僕を呼んで』、エステール・ガレル『つかのまの愛人』『君の名前で僕を呼んで』

2014年8月にイラク西部の少数派ヤジディ教徒の村が過激派組織ISの襲撃に遭い、父親を殺され、弟を連れ去られたザラ(ディラン・グウィン)は、IS戦闘員の奴隷にされてしまう。一方、クルド人を支援する連合軍には女性のみで構成される特殊部隊「蛇の旅団」が存在し、女性に殺されると天国に行けないと信じるIS戦闘員から恐れられていた。ISから逃げ、蛇の旅団に救出されたザラは、父の敵を討ち弟を捜すため、自ら武器を取って部隊と共に戦うことを決意する。

監督・脚本のカロリーヌ・フレストは、実話をフィクションの高みへと飛翔させ、単なるミリタリー・アクションの垣根と属性を越え112分を一気呵成に見せきった。2015年にパリで起きた「シャルリー・エブド襲撃事件」。同紙に寄稿するライターだった監督は、同僚を失った経験から、初長編監督作の主題を女性問題と過激派に絞り、製作を開始した。
2014年8月3日、IS(イスラミックステート:イスラム国)が、イラク北西部山岳地帯のクルド系ヤジディ教徒が住む村々に侵攻。数週間のうちに5千人が虐殺され、7千人以上の若い女性や子どもたちが性奴隷や少年兵として連れ去られたのだ。映画は冒頭に赤い花、ノスタルジックなアリアの劇伴が流れる中、長閑な村の光景を映し出す。 絵を描いている19歳のザラに、父は心配げに語りかける。
「米国へ行くなら英語を使ったほうがいいよ」「そうね」
悪戯盛りの小さな弟に、「唾を吐くのは私たちの宗教では悪いことよ」
と優しく諭すザラ。

そんな家族の日常が、突如急襲してきたISたちによって破られる。 「悪魔崇拝者ども!改宗しろ!」 と銃を突き付けられ、ザラの絵も男たちも撃たれてしまう。阿鼻叫喚の現場を描く導入部に見入るうち、タイトル画面に変わり、検問所ではザラら女たちが人身売買にかけられる。
ザラを処女と知って買う男が、妻のいる英国人であることが衝撃だった。性奴隷として監禁された家の周囲では、街宣車(?)が、「アラーの掟により、死後1時間経った者との性行為を禁ず。切り口が十字のトマトを食べるな。キュウリを人前で丸ごと食すな」など勝手な解釈を喧伝して廻る。

こうした細かなディテールを用いたリアリティ、ざらついた映像が迫真力を増幅させる。一つ一つのショット強度が凄いのだ。臨場感でドラマが立ち上がり、誰もが共振できる普遍性を持ち得た本作。逸話の連なりが、やがて更に強度を増した物語へと紡がれる。そこには未来への道標も示された。
女だけで編成される特殊部隊・多国籍連合軍「蛇の旅団」のクルド人を援護する胸のすく活躍は、本編の白眉である。

浅薄ながら、メソポタミア信仰の少数民族ヤジディ教徒についての知識に疎かった。が、十分に理解し得る背景、世界で起きている忌まわしき実相と、それらを明らかにすべく勇気を持って行動し発言する女性たちの存在を教えてくれた本作との出会いに感謝したい。
ちなみに、ザラが付けるコードネーム「レッド・スネイク」は、ヤジディ教の色である赤を示している。ザラの想いに馳せ、冒頭の赤い花の映像に立ち返っていた。
(大瀧幸恵)

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2019 年/フランス、イタリア、ベルギー、モロッコ/英語他/スコープサイズ/5.1ch/112 分
配給:クロックワークス
© Place du Marché Productions – Kador – Davis Films – Délice Movie – Eagle Pictures – France 2 Cinéma
公式サイト:https://klockworx-v.com/redsnake/
★2021年 4 月 9 日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開

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