ブックセラーズ (原題:THE BOOKSELLERS)

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監督 / 編集:D・W・ヤング
プロデューサー:ジュディス・ミズラキー、ダン・ウェクスラー、D・W・ヤング
エグゼクティブ・プロデューサー:パーカー・ポージー
共同プロデューサー:デブラ・マクラッチー
撮影:ピーター・ボルテ
音楽:デヴィッド・ウルマン
ナレーション:パーカー・ポージー
主要なニューヨークのブックセラーたち:デイヴ・バーグマン、アディナ・コーエン、ナオミ・ハンブル、ジュディス・ローリー、ジム・カミンズ、アーサー・フルニエ、スティーヴン・マッシー、ビビ・モハメド、ヘザー・オドネル、レベッカ・ロムニー、ジャスティン・シラー、アダム・ワインバーガー、ヘンリー・ウェッセルズ
その他の登場人物:シリータ・ゲーツ、グレン・ホロウィッツ、エリック&ジェス、フラン・レボウィッツ、トム・レッキー、ニコラス・D・ローリー、エド・マッグス、スーザン・オーリアン、ウィリアム・リース、キャロライン・シンメル、サンデイ・スタインキルヒナー、ゲイ・タリーズ、ジェイ・ウォーカー、ロブ・ウォーレン、ナンシー・バス・ワイデン、ケヴィン・ヤング、リジー・ヤング、マイケル・ジンマン

ニューヨークブックフェアには、老舗書店の店員はもとより、業界でも有名なブックディーラー、希少本のコレクター、古書業界の若手までさまざまな人が集まってくる。ブックセラーと呼ばれる彼らはビジネスとして本を取り扱うだけでなく、みな一様に本を愛している。彼らが扱う本の中には、ビル・ゲイツが競り落とした「レオナルド・ダ・ヴィンチのレスター手稿」や宝石がちりばめられた貴重本なども含まれている。

典雅なメロディに乗せて、古今東西の様々な本の挿絵が映し出される。優雅にして豪奢な装丁本もある。ネットで書籍検索をするのが当たり前になった現在、紙の温もりや質感に触れ、文字の山に埋もれて探検する、あの書店で過ごす芳醇な時間を思い返す。
「読書は空想への逃避か?それ以上のもの。完全なるもの」
といった本に纏わる格言が、句読点のように挿入される。本作は本について「喋り倒す」映画でもある。矢継ぎ早に多くの、本を売る人、作る人、集める人、読む人、探す人、鑑定する人らが登場し、読書愛を語り尽くすのだ。おかげでメモを取る手が忙しかった(笑)

NYブックフェアが行われるアッパーイーストサイドのビルは、 南北戦争の頃から建っている。世界一の歴史と規模を誇るこの催しには、 名うての古書ディーラーが集う。
「博士号を取ったけど、全く食えないから古書ディーラーになったよ」
「ディーラーは、売買と発見の間を走るジェットコースターのようなものだね」
「本の上にグラスを置く人がいるのよ。私から言わせれば 死刑だわ!無神経だもの。 傷めるのが怖いわぁ」
「コレクターは変質的。エルビス・プレスリーの皿を買うために祖母を売るようなもの」
個性的な言質を放つ古参ディーラーたちの姿が楽しい。
世界初の印刷本といった稀少本から正統派の小説初版本、サブカルチャー本まであらゆる本が居並ぶ秘境のようだ。
NYの本屋街として有名な通り「ブックロウ」。1950年代にはNY全体で368店あった書店が、今は79店に減ったという。特に古書店を担う世代がいなくなっているのも深刻だ。卑近な例で恐縮だが、神保町の近くで生まれ育ったため、古書店や本屋街をハシゴするのが日常だった身には、神保町の現在と重ね合わせてしまった。
知識や文化の香りは、デジタルに移行していくのだろうか。楽曲のストリーミング配信が急増し、CDやレコードといった音楽が「形」をしていたことを知らない世代も多いという。本も同じ運命を辿るのか…。

本作の主訴は「ブック」ではなく「ブックセラー」なので、お金に関する話は切り離せない。本はビジネスなのだ。本を「投資」の対象として考える人々は多い。ダ・ヴィンチのレスター手稿をビル・ゲイツは電話でのオークション参加により、史上最高額の28億円超で競り落とした。その際の映像も見られるのは貴重だ。

興味深かったのが、最近では有名小説の初版本より、手紙や手稿、メモといった アーカイブに人気が集まっているという点だ。欲しい人が価値を決定づける。投資の市場でもアーカイブは注目の的。例えば、歌手ウディ・ガスリーや ボブ・ディランの音源、映像記録がファンや研究者から引く手数多だそうだ。面白い傾向である。

映画ファンとして感動的な逸話も紹介される。オスカー脚色賞を獲得した受賞者のスピーチだ。
「『ブロークバック・マウンテン』は最初は本だった。ブックセラーズに感謝したい。文化を守る全ての人に感謝! 本をなくしてはならない」
『ブロークバック・マウンテン』を愛してきた者として、このようなスピーチの存在を知らないのは迂闊だった。

重ねて問うが、本はデジタル化・ネット社会の波により、消え去る文化なのか?本作は回顧・郷愁的に取り上げているか?最後にブックセラーたちの座談会も催される。明るい未来についての問いかけを忘れない。本を発見する喜びと享受する幸せを再確認させ、知的好奇心を刺激するドキュメンタリーだ。
(大瀧幸恵)


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アメリカ映画 | 2019年 | 99分|16:9|5.1ch
配給・宣伝:ムヴィオラ、ミモザフィルムズ
© Copyright 2019 Blackletter Films LLC All Rights Reserved
公式サイト:http://moviola.jp/booksellers/
★2021年4月23日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほかにて、全国公開

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