監督・脚本:ハーモニー・コリン
撮影:ブノワ・デビエ
出演者:マシュー・マコノヒー(ムーンドッグ)、スヌープ・ドッグ(ランジェリー)、アイラ・フィッシャー(ミニー)、ステファニア・オーウェン(ヘザー)、ザック・エフロン(フリッカー)、ジョナ・ヒル(出版エージェント)、マーティン・ローレンス(イルカ船の船長)、ジミー・バフェット(ジミー・バフェット)
アメリカ・フロリダ。一冊だけ発表した詩集が大絶賛され、天才として崇められた詩人ムーンドッグ(マシュー・マコノヒー)。大富豪の妻に頼っては、親友(スヌープ・ドッグ)と共に酒、女、マリファナにふけり、船を乗り回し、ボートハウスでパーティーを繰り広げる毎日を送っていた。そんな中、ある出来事がきっかけで新たな詩集を発表しなければ無一文になるという窮地に陥ってしまう。
ハーモニー・コリンは好き嫌いの分かれる監督かもしれない。本作を観て「これのどこが面白いの?」と感じる人も少なからずいるだろう。主人公の詩人ムーンドッグが、ひたすらお遊びに興じる映画だからだ。ストーリーらしいストーリーはない。フロリダの陽光の下、海とクルーザーを住居に、終始ハイな様子でタイプライターを打つ。酒、ドラッグを切らさない。仲間たちと口を開けば、周囲が耳を覆う程のスラングを連発。TV放送だったら「ピー音」が鳴りっ放し状態。父親としてもクレイジーなヤツこの上ない。
真の自由人なのだ。
映画は著作物なので、創り手である監督の心映えが如実に映し出される。19歳の時に『KIDS/キッズ』でデビュー。『ガンモ』が世界を驚愕させた22歳の時から観続けているファンは知っている。コリンは「上品」なのだ。底流に流れる品性を感じ取っているからこそ、ファンは『スプリング・ブレイカーズ』以来7年ぶりの長編を待っていた。
期待通り、コリンは何人にも忖度しない。漂流する魂は純なままだ。権威や常識に左右されず恐れを知らない。コンプライアンスなぞどこ吹く風。自粛して縮こまっている現代人の心に風穴を開けてくれる。ムーンドッグと同じ、コリンが真の自由人であることを確認できた喜びに浸った。
快楽の波に揺れながら、愛猫と共にムーンドッグは海の藻屑となって消え去るのか、それとも…。観客に解釈の幅を持たせた余白的な演出が心憎い。エンディングの文字さえも酔っている。おふざけに徹した小気味良さ。 美しい夕映えを背景に、全米一とも言えるほどの技量を要す俳優マシュー・マコノヒーの、芯からバカバカしさを楽しんでいる演技が心地好い。
(大瀧幸恵)
2019年製作/95分/R15+/アメリカ
配給:キノシネマ
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公式サイト:https://movie.kinocinema.jp/works/beachbum/
★2021年4月30日(金)より、キノシネマみなとみらい、キノシネマ立川、キノシネマ天神他にて全国公開
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