監督:M.J.バセット『サイレントヒル:リベレーション』/脚本:イザベル・バセット、M.J.バセット
出演:ミーガン・フォックス『トランスフォーマー』、ジェシカ・サットン『インサイド・マン 2』、
フィリップ・ウィンチェスター『サンダーバード』
サム(ミーガン・フォックス)をリーダーとする傭兵(ようへい)部隊は、誘拐された政治家の娘を救出するためアフリカへ向かうが、テロリスト集団に襲撃されてしまう。そこでサムたちが逃げ込んだのは、かつて密猟者がライオンの繁殖を行っていた廃虚だった。どう猛なライオンがサムたちに襲いかかろうとする中、テロリストの追っ手も迫ってきていた。
ミリタリーアクション好きには堪らない作品だろう。監督のM.J.バセットは、一部キャストに元軍人を起用しており、バセット自身も特殊部隊から訓練を受けたというのだから、実践的な経験を活かしまくりの戦闘描写には生の迫力がある。ミーガン・フォックス率いる傭兵軍団は兵士の人種も様々で、くせ者揃い。手榴弾を投げつつ援護を擁しながら前進したり、敵方を撹乱した隙に家の裏に回り込むなど、作戦や動き、流れが自然でリアルそのもの。戦争ドキュメンタリーを観ている気分になる。
迫力のある撃ち合い、数台のジープ(戦闘車両?)で脱出する場面などは、テンポと編集のキレが良く、疾走感は最高だ。銃器に詳しい人が見れば分かるのだろうけれど、ミーガン・フォックスら傭兵軍団が用いる銃は如何にも重厚そうで質感がある。それを両肩に担いで走り回るミーガン・フォックスはカッコいい!銃撃をはじめとする優れた戦闘能力だけでなく、精神の強靭さと靱やかな面も体現している。
本作の特筆すべきは、舞台がアフリカの大地だという点だ。ライオンを密猟し、秘密裏に繁殖を行っていた非合法集団。ライオンの子どもでさえ役に立たなければ容赦なく扱う男たち。血肉に飢えたライオンがケージを破る。広大なアフリカでは、人間は食物連鎖の最底辺だ。そして、忍び寄るテロリストたちの追手。傭兵部隊は二重三重の敵に取り囲まれ、絶対絶命の危機に陥る·····。
一行が川を下る際の夕陽の美しさ。人間も自然界の一部だと痛感するような俯瞰した空撮は、神の視座を得たかのようだ。実際に、南アフリカでは劣悪な環境の下でライオンが狩りの獲物にされてたという。バセット監督の主訴も明確に伝わった。
(大瀧幸恵)
2020年製作/106分/PG12/南アフリカ・イギリス合作
配給:クロックワークス
(C) 2020 Mannequin Phoenix (Pty) Ltd. and Phoenix Wallace Limited
公式サイト:https://klockworx-v.com/rogue/
★2021 年 5 月 7 日(金)より、全国公開
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