監督:リック・ローマン・ウォー
脚本:クリス・スパーリング
出演:ジェラルド・バトラー(ジョン・ギャリティ)、モリーナ・バッカリン(アリソン・ギャリティ)、デヴィッド・デンマン(ラルフ・ヴェント)、ホープ・デイヴィス(ジュディ・ヴェント)、ロジャー・デイル・フロイド(ネイサン・ギャリティ)、アンドリュー・バチェラー(コリン)、メリン・ダンジー(ブリーン少佐)、ホルト・マッキャラニー(トム)、スコット・グレン(デイル)
突然出現したすい星の破片がいん石となって地球に衝突し、さらに地球を壊滅させるほどの巨大いん石が48時間以内に衝突することが判明する。世界崩壊の危機が迫り政府に選ばれた人々の避難が始まり、建築技師のジョン・ギャリティ(ジェラルド・バトラー)は妻子と共に空港に駆けつけるが、息子(ロジャー・デイル・フロイド)の持病により輸送機への搭乗を拒まれてしまう。パニックに陥った人々が暴徒と化す中、生き延びるすべを探す一家は、極限状況であらわになる人間の闇に直面する。
“突然の天変地異"によるディザスター映画という先入観を持って観始めたところ、家族愛の描写に力点が置かれ、最後まで没入感が途切れることはなく、面白い鑑賞体験を齎してくれた。いやはや、失礼ながら拾い物的佳作であった。
米国映画なれど、”米国だけが助かる”、”米国だけが正しい”、ヒーロー主義を押し付けた、これまでのハリウッド作品とは異なり、多様な価値観、民族、地球全体への目配りがなされていた点も好印象だ。
彗星や巨大隕石が地球に向かってくる予兆を見せ、野次馬的に眺めていた人々にも冒頭から危険が及ぶ設定。大小、多くの隕石と欠片がバラバラと落ちてくる。落下地だけではなく、周縁の地域にも衝撃波が伝わる。その甚大さが人類の想像以上だった被害に及ぶ場面が、確かなエビデンスの基に描かれ、説得力がある。
「クラークの破片が、◯時間後に何処其処へ落ちる」といった予測報道が次々とメディアを通して伝えられる。パニックになる人々。強奪や銃撃が起こるところは、日本と違い、米国の出来事なのだと実感させられた。
地球規模の危機に瀕する各国の様子を縦糸に、ジェラルド・バトラー扮する建築士の父親と、別居中の妻、疾患を持った息子の関係を横糸に編みながら、物語は紡がれて行く。バトラーであれば”強い父親像”を連想するが、浮気が原因で妻に追い出された、少し情けない平凡な技師の設定となっている。妻は男性主人公の庇護に隠れるのではなく、主体的に家族を守ろうとするスタンスが与えられ、妻の場面に大きなドラマ性を持って描写されている点が秀逸だ。
パニック〜暴動といった人間悪だけでなく、随所に温かく優しい自助の精神が挿入されるのも、脚本構成の優れた面。希望の兆しが見えるまで、緊張感を途切れさせない展開は見応えがある。
(大瀧幸恵)
2020年製作/119分/G/アメリカ
提供・配給:ポニーキャニオン
提供:アスミック・エース
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公式サイト:https://greenland-movie.jp/
★2021年6月4日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほかにて、全国公開
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