監督・製作:スパイク・リー
製作:デヴィッド・バーン
字幕監修:ピーター・バラカン
出演:デヴィッド・バーン、ジャクリーン・アセヴェド、グスタヴォ・ディ・ダルヴァ、ダニエル・フリードマン、クリス・ジャルモ、ボビー・ウーテン・3世、kura
元トーキング・ヘッズのメンバーで、現在はソロ活動をするデヴィッド・バーンが手掛けたアルバムを基にしたブロードウェイの舞台が評判を呼ぶ。これを受けてデヴィッドは映画監督のスパイク・リーに映像化の話を持ち掛け、本作が完成する。冒頭では、プラスティックの脳を手にしたデヴィッドが登場。人間の脳の進化や、現代社会が抱えるさまざまな問題について語り始める。
試写を観たのは数ヶ月前なのに、未だ興奮が醒めやらない!映画館にも脚を運びたいし、Blu-ray が出たらきっと毎日観てしまうだろう。トーキング・ヘッズのフロントマンだったデビッド・バーン。36年前のライブ映画、ジョナサン・デミ監督作『ストップ・メイキング・センス』を凌駕したのでは?と思うほどの傑作に仕上げた監督スパイク・リー、両氏に敬意を表したい。
ケーブルもPAもワイヤーもない·····。デビッド・バーンと11人のミュージシャンは何の枷にも縛られず、自由に踊り歌い演奏する。舞台はこれ以上削ぎ落とすことのできないミニマルなデザイン空間だ。従来の常識を覆したライブ構成に於いて、響き渡るデビッド・バーンのシンプルな主張。幕開けは、脳のレプリカを抱えたバーンが人間の脳の進化について語り始める「Here」。ブロードウェイの舞台で上演されただけにシアトリカルな雰囲気が上手く馴染む。
以降、細い縦のロープが張られた奥からバンドメンバーが出入りしては、トーキングヘッズ時代の楽曲や舞台の書き下ろし曲が次々と演奏される。全員がグレーのスーツに裸足。コンテンポラリーな振付けもあれば、マーチングバンドのように整然としたフォーメーションを組む。美しい動きを映すため、綿密に計算されたと思しきライティングとカメラワークの完璧さ!とにかくカッコいいのだ。あらためて、スパイク・リーのセンスと耳の良さ、演出技量に感服させられた。
白眉は、ジャネル・モネイの「Hell You Talmbout」のカバーだろう。演奏中、警察暴力の犠牲となり逝った人々の顔と名前が背後に映し出される。バーンらが「Say His Name」「Say Her Name」とリフレインするフレーズが強烈に焼き付く仕掛けだ。興奮と感動、多幸感を齎してくれる全21曲、107分のスペクタクルなステージは見逃せない!
(大瀧幸恵)
2020年製作/107分/G/アメリカ
配給:パルコ
(C)2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:https://americanutopia-jpn.com/
★2021年5月28日(金)より、TOHOシネマズシャンテ、渋谷シネクイントほか全国公開
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