クローブヒッチ・キラー (原題:The Clovehitch Killer)

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監督:ダンカン・スキルズ
脚本:クリストファー・フォード
出演:チャーリー・プラマー、ディラン・マクダーモット、マディセン・ベイティ、サマンサ・マシス

敬虔な人々が多い田舎町に暮らす16歳の少年タイラー(チャーリー・プラマー)は、ある日父親ドン(ディラン・マクダーモット)の小屋に忍び込み、猟奇的なポルノや異様なポラロイド写真を見つける。不審に思った彼は調べを進める中で、ボーイスカウトの団長を務め周囲からの信頼も厚い父が、10年前に起きた未解決の「巻き結び(クローブヒッチ)連続殺人事件」の犯人ではないかと疑念を抱く。タイラーは同じ事件を追う少女カッシ(マディセン・ベイティ)と共に真相を探り始める。

映画では明確に示されなかったものの、登場人物たちが住む地域は、キリスト教プロテスタント系福音派ではないかと推察した。教会に集う敬虔な家族、少年たちはボーイスカウトに勤しむ片田舎の小さな街。しかし、人々は何処か息苦しく閉鎖的だ。福音派の多くは”浄く正しい新天地”を求めて、欧州から新大陸に渡ってきた白人たちである。聖書の内容を是とし、進化論を信じない。悪名高い禁酒法を推進したのも福音派だったという。清貧を重んじ、保守的な生活を好む。”偉大なる強いアメリカ”の復活を望み、多くが共和党支持者であり、トランプに投票したのもこの層ではなかったか。

だが、神を信仰していても人間の性(さが)は抑えようがない。アンビバレントな屈折線を描いて表出する。米国映画のシリアルキラー、サイコパスものは、様々な応用編を見せながら変容して行くようだ。本作は、純粋な少年が父親という壁を越えて成長を遂げる思春期映画の体(てい)を採る。

『荒野にて』『ゲティ家の身代金』と注目作が続くチャーリー・プラマーが、父への敬愛と疑惑、地域に於ける不全感から、少年期の終焉を自覚するまでを繊細且つ造型深く演じている。プラマーに拮抗する印象的な演技を見せるのは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でシャロン・テート襲撃に加わった一味に扮したマディセン・ベイティ。「異教徒の女だ。改宗させてやろうか?」などと、地域社会から疎まれながらも、真実に迫ろうとし、主人公を導くキーパーソンを力強く表現した。
単なる美男美女をキャスティングしなかった点、犯行を猟奇的過ぎない描出に抑えたところに、ダンカン・スキルズ監督の審美眼とバランス感覚がうかがえた。
(大瀧幸恵)


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2018年/アメリカ/109分
配給:ブロードウェイ
(C) CLOVEHITCH FILM, LLC 2016 All Rights Reserved
公式HP: https://clovehitch-killer.net-broadway.com
★2021年6月11日(金)より、新宿武蔵野館ほか 全国順次公開

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