ザ・ファブル 殺さない殺し屋

原作:南勝久
監督・脚本:江口カン
脚本:山浦雅大
音楽:グランドファンク
アクション監督:横山誠
ファイトコレオグラファー:岡田准一
出演:岡田准一(ファブル/佐藤アキラ)木村文乃(佐藤ヨウコ)平手友梨奈(佐羽ヒナコ)安藤政信(鈴木)黒瀬純(井崎)好井まさお(貝沼)橋本マナミ(アイ)宮川大輔(ジャッカル富岡)山本美月(ミサキ)佐藤二朗(田高田)井之脇海(黒塩)安田顕(海老原)佐藤浩市(ボス)堤真一(宇津帆)

最強の殺し屋「ファブル」として裏社会で恐れられていたものの、ボス(佐藤浩市)から誰も殺さずに一般社会に溶け込んで生きるよう命じられたアキラ(岡田准一)。相棒ヨウコ(木村文乃)と兄妹を装い、アルバイト先のデザイン会社オクトパスの社長・田高田(佐藤二朗)と社員ミサキ(山本美月)に素性を知られることなく平穏な日々を過ごしていた。そんな中でアキラはNPO団体の代表を務める宇津帆(堤真一)と出会い、やがて彼がターゲットから金をだまし取っては命も奪う危険人物であることを知る。

本作から登場した堤真一、平手友梨奈、安藤政信らの存在感が光っていた。ということは、ドラマ部分に於いて前作を凌駕したと言えるのではないか。この3人が1塊りとなり、狡猾ぶり、残虐さで“ファブル”に対抗してくるのだ。最大の敵と成り得る肉付けがしっかりしているだけに、説得力を持って迫り来る。特に際立つのが平手友梨奈。少女の持つ儚げな魅力と図太さを併せ持ち、瞳には悲しみと憎しみを宿す。限られた台詞量でこれだけ人物造形してみせた平手の技量に圧倒された。物語を最後まで牽引する役割を担わせた脚本も確かな下地となっている。
不気味な怪演の安藤、良識と残虐さを表出した堤の両ベテランに引けを取らない魅力が、続編に有りがちな賛否の“否”を打ち消す結果となった。

前作からの呼び物となっているアクションシーンを楽しみに映画館へ訪れる観客も多いだろう。本作では「ファイトコレオグラファー」としてクレジットされている岡田准一の個人芸、アクション監督の設計力とも前作を超える規模と迫力を呈している。『キルビル』的に、室内が多かったアクションの不完全燃焼化を払拭。野外のアクションパートが群を抜いている。野外では勢い“引き”のカメラアングルが中心になり、編集の切り返しではごまかせない攻防を見せる。
香港アクション映画に寄せるのだったら、お笑いが付いてまわり軽みを帯びるが、ワイヤーアクションもCGも使わない真っ向勝負のタイ映画の趣に近い。カメラ、美術大道具、照明、音響、演者らスタッフワークの息が合わなければ、これだけのクオリティには達し得なかっただろう。

レギュラーメンバーの中では、山本美月、佐藤二朗のシークエンスが相変わらず笑わせてくれた。岡田准一が表現するアクションパートとの緩急ギャップを、出演者も楽しんでいるかのようだ。やはり、佐藤二朗の支えがあってこそ。つくづく得難い名優である。
(大瀧幸恵)


2021年製作/131分/G/日本
配給:松竹
(C) 2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会
公式サイト:https://the-fable-movie.jp/
★2021年6月18日(金)より、全国公開

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