監督:静野孔文
脚本:冨岡淳広
音楽:和田 薫
キャラクター原案:岩元辰郎
エグゼクティブプロデューサー:イサム・ブカーリ 清水慎治
プロダクションスーパーバイザー:サラ・モハンマド
声の出演:古谷 徹 神谷浩史 中村悠一 中井和哉 三石琴乃 黒田崇矢
アラビア半島を席巻するアブラハの軍隊が、貿易都市メッカに向かって進軍を続ける一方、メッカの民たちは平和的な解決を望んでいた。だが、アブラハは彼らに「カアバ神殿と聖なる石の破壊」「信仰の放棄」「奴隷になる」という条件を突きつける。あまりにも厳しい要求に激怒したメッカの民たちは戦うことを誓い、青年アウスも志願兵として名乗りを上げる。
サウジアラビアのマンガプロダクションと東映アニメーションが、アニメコンテンツの共同制作についての協定を交わした、という本作の誕生秘話が興味深い。初の日本・サウジアラビア合作による長編劇場アニメは、これまでの作品とは根本的に異なっていた。子ども向けアニメにはあまり縁のない古代アラビア半島が舞台。映像のトーンは殆ど“闇”?と思うほどの暗色に支配されている。昼日中であっても室内を照らすのは、窓からの逆光スモークという具合。電気やガス灯さえない時代を忠実に再現した日本側の映像監督の力量が光る。
戦う際、兵士たちが乗るのは馬ではなく象!既存の戦場映画に慣れ過ぎた目には新鮮に映る。尖兵の後方、巨大な象に数人の兵士が乗り込み、のっしのっしと敵方へ迫る。象の上から射る矢は角度と高さを持って敵に放つ。 巨大像を突破したくとも、人間はありのように踏み潰されるのだ。象の上からのアングルも新鮮だ。巨大な体躯から射す影がやたらと大きい。不気味さを増す戦場シーンは、陰影に富んだ色調と迫力のバズーカ音と共にスクリーンを圧倒する。自国の文化や戦法を知り抜いたサウジ側に基本コンセプトを任せたのは正解だった。
映画の主たる構成やコンセプトはサウジ側が手がけ、映像制作のほうを東映アニメーションが中心となって担ったとのことだ。
当時、隆盛を極めた貿易都市メッカを争い、平和的解決を望むメッカの民。長老・名士の言葉が忘れ難い。
「戦わず和平交渉をするのだ。 メッカを離れよ。生きてさえいればいつかは戻れる日が訪れる」
だが、敵方が突きつけた条件は過酷だった。①「神殿と聖なる石の破壊」②「信仰を捨てるよ」③「奴隷になれ」
そんな要求は受け容れられない、と戦うことを決意した志願兵たちの人物造形が豊かだ。主人公の青年アウスを吹き替えるのは、古谷徹。その他にも神谷浩史、黒田崇矢、中村悠一、三石琴乃ら一線級の声優陣が揃い、緊張と怒り、高揚、友愛などを巧みに表現する。アニメファンならずとも楽しめる一作だろう。
(大瀧幸恵)
製作:マンガプロダクションズ 東映アニメーション
制作:マンガプロダクションズ 東映アニメーション 横浜アニメーションラボ アーチ
【日本語吹き替え・英語字幕】上映時間:1時間50分 音声:5.1ch スクリーンサイズ:ビスタサイズ:サウジアラビア/日本
配給:東映アニメーション
配給協力:東映
宣伝:東映エージエンシー
©2021 マンガプロダクションズ
公式サイト:https://www.journey.toeiad.co.jp
★2021年6月25日(金)より、新宿バルト9、梅田ブルク7他にて全国公開
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