監督:デレク・ツァン(曾國祥)
脚本:ラム・ウィンサム(林詠琛)、リー・ユアン(李媛)、シュー・イーメン(許伊萌)
撮影:ユー・ジンピン(余靜萍)
出演:チョウ・ドンユイ(周冬雨)、イー・ヤンチェンシー(易烊千璽)、イン・ファン(尹昉)、ホァン・ジュエ(黃覺)、ウー・ユエ(吳越)、チョウ・イエ(周也)
進学校に通う高校3年生の少女チェン・ニェンは、大学進学のための全国統一入学試験を控え重苦しい日々を過ごしていた。ある日、一人の同級生が陰湿ないじめを苦に自殺し、彼女が新たないじめの標的となる。いじめっ子たちの嫌がらせが激しくなっていく中、チェン・ニェンは下校途中に集団暴行を受けている少年・シャオベイと出会う。共に孤独を抱えた彼らは次第に心を通わせていく。
一途な純愛もののように見え、鑑賞後にはハード且つヘビーな印象のほうがより濃く残る。これ程までに中国現代社会が抱える負の部分をリアルに描かれては、デレク・ツァン監督の達成度に於いて、本作は社会派作品と捉えざるを得ない。もちろん、若きチョウ・ドンユイ、イー・ヤンチェンシー両主演の輝きと切なさ、悲哀、慟哭を主軸として観ることも可能だ。多面性を齎せた点がオスカー国際長編映画賞にノミニーされた所以だろう。
冒頭、苛めの抑止力になることを願う旨の監督からのメッセージに次ぎ、チョウ・ドンユイが呟く「遊び場だった」が、「ここは遊び場」という現在形に変換され、2011年のドラマが始まる。少女2人が見せた戸惑いの表情が意味するものは物語の序章に過ぎなかった。以降、畳み掛けるような素早いテンポで怒濤の展開を迎える。名門高校最終学年に於ける最大の行事は大学受験だったはずだ。少女チェンにとって痛ましい問題がその前にのしかかる。
学校での悪意が増す中、下校中に出会った孤独なストリートチルドレンのシャオベイ。
「金をくれれば守ってやるよ」
「 あんたと違うわ。私は大学へ行くの」
「世の中には2種類の人間しかいない。苛める者と苛められる者」
学歴偏重主義、熾烈な競争、苛め…。2人を隔てる壁は高かった。共通するのは激しい孤独と痛み。「この人を守りたい」。そんな意識が目覚めた途端、眼前に別の世界が開けてきた。頼れる者のいない2人だけの世界を共有し、オートバイに乗って街を走り抜ければ、社会が抱える格差問題など吹き飛んでしまう。瑞々しい開放感と高揚感に包まれる。
11年前、チャン・イーモウ監督作『サンザシの樹の下で』がデビューだったチョウ・ドンユイが、少女らしい儚さはそのままに、幸薄い逆境でも強固な意思を秘めた内面性を、ボーイズグループのイー・ヤンチェンシーも複雑な内心を表現豊かに演じた。若い2人から生命を燃やし尽くす熱演を引き出したのは監督の功績だろう。
一方、警察側の若手刑事にも力点が置かれた演出は散漫になり、不要な気がした。2人とその周辺の大人側の視点に絞ったほうがタイトだったのではないか。
(大瀧幸恵)
2019 年/中国・香港/中国語/135 分/字幕翻訳:島根磯美
提供:クロックワークス/楽天 TV
配給:クロックワークス
協力:大阪アジアン映画祭
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★2021年7月16日(金)より、新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマほか全国ロードショー
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