にじいろトリップ~少女は虹を渡る~

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監督:いまおかしんじ
脚本:宍戸英紀
出演:櫻井佑音/荻野友里/小林竜樹/歳内王太/西山真来/小川朝子/守屋文雄/佐藤宏/サニー(犬)/櫻井拓也(写真)


小学5年生の晴花(櫻井佑音)は両親と共にキャンプ場を訪れるが、離婚寸前の両親は険悪な雰囲気になってしまう。翌朝、一人で森の中を歩く彼女は願い事がかなうといわれる滝を目指す途中、同い年の少年・大地と出会う。彼の案内で滝にたどり着き、両親が仲直りできるよう祈った後、晴花は急な腹痛に襲われる。やがて、森の中で倒れているところを発見された彼女の前で両親が口論し始め、いたたまれなくなった晴花はその場から逃げ出す。

まるで掌のような作品…。僅か39分の中に少女の繊細で嫋やかな気持ちを詰め込んでいる。しかもミュージカル仕立てである。急に歌い出すことが苦手な”ミュージカルアレルギー”の人でも、11歳の晴花役・櫻井佑音の愛らしい姿を観れば受け容れてしまうのではないだろうか。櫻井佑音は如何にもミュージカル子役然とした佇まいでもなく、メディア擦れした顔でもない。歌唱風も妙な癖がなく自然体なところが好もしい。

歌で状況設定を説明したり、踊りながら演技をするのは想像以上に難しいはずだ。それは演出する側とて同じ。いまおかしんじ監督が、なぜ敢えて困難な話法を選んだのか、聞いてみたい気もする。が、観ているうちにそれはどうでもいいと思えてくる。雨のキャンプ場。両親の離婚を前に揺れる気持ち。有責側と分かっていても母を慕う複雑さ。リアルな描写があると思えば、映画はファンタジーに転変する。

不思議な映画だ。森の中で出会った少年・大地は何故か関西弁。連られて晴花も関西弁を話し出す。「ニセコを知ってるか?」などと大地が言うので、あら?ここは北海道?では先ほど見えていた富士山は羊蹄山?…と認知が一瞬彷徨う。ロケ地は「ふもとっぱらキャンプ場」…、やはり富士山でいいのだわ…。1人で合点して楽しめる余白を与えてくれる。

11歳の晴花が時折、驚くほど大人びた表情を見せる。監督が、子どもから少女に変わりつつある時期を逃すまいと撮影を急いだ理由がよく分かる。端境期を銀幕に焼き付けた功績は大きい。森の中で発症する腹痛は、初潮の暗喩だろう。いまおかしんじ監督だからこそ慈しみを込めて描出した表現である。晴花が願いを伝える滝の空撮が美しい。澄んだ水が少女の透明な気持ちを発露しているかのようだ。
(大瀧幸恵)


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製作:アイドル文化振興会
製作協力:国映株式会社
企画:朝倉庄助
配給:ブロードウェイ
2021年/カラー/39分/DCP/5.1ch/
(C)国映株式会社
公式HP: https://nijiirotrip.net-broadway.com
★2021年9 月 22 日 ( 土 ) よ り 新 宿 K 'sシネマにて公開 、 以降全国順次公開

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