ほんとうのピノッキオ (原題:PINOCCHIO)

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監督/共同脚本:マッテオ・ガローネ(『ゴモラ』『五日物語 -3つの王国と3人の女-』)
プロデューサー:ジェレミー・トーマス(『戦場のメリークリスマス』)
出演:ロベルト・ベニーニ(『ライフ・イズ・ビューティフル』)、マリーヌ・ヴァクト(『17歳』)、フェデリコ・エラピ

貧しい木工職人のジェペット爺さん(ロベルト・ベニーニ)が丸太から作った人形が、命を吹き込まれたようにしゃべり始めた。ピノッキオ(フェデリコ・エラピ)と名付けられたやんちゃな人形は、ジェペットのもとを飛び出して、森の奥深くへと誘われる。道中、ターコイズ・ブルーの髪を持つ心優しき妖精の言いつけにも、おしゃべりコオロギの忠告にも耳を貸さない。なおも命からがらの冒険を繰り広げるピノッキオは、はたして「人間の子どもになりたい」という願いを叶えられるのだろうか……。

大方の人々が持つピノッキオのイメージは、ディズニーアニメが造形し世界中に浸透させた”それ”ではないだろうか。だが、カンヌ国際映画祭の常連、『ゴモラ』『リアリティー』でグランプリを受賞したイタリアの鬼才マッテオ・ガローネが監督した本作は、パブリックイメージを大きく覆す破壊力を放つ。
まず、ルックの面から言ってもピノッキオは「可愛くない」。樹木の年輪や木肌がそのままだ。
「人間になりたい」と願うが、その道は生易しいものではない。待ち受けているのは「死」であり、不遇、貧困、暴力、陰惨な日常だ。痛烈な風刺、時代批評も塗してある。
「嘘をつくと鼻が伸びる」のは同じだが、教訓めいてはいない。なにせ、6歳(!)の時に「ピノッキオ」のストーリーボードを書いたというガローネ。ピノッキオの造形には、ひと方ならぬ思い入れがあるのだろう。「夢と悪夢の無限の工場」と世界観を称している。砂糖菓子のように、甘く楽しい綺麗なファンタジーを見せる気は更々ないことが分かる。

1883年にイタリアの「子ども新聞」で2年に渡り連載された小説が基だ。そしてガローネが最も影響を受け、インスパイアされたのは、1972年、イタリアンネオレアリズモの巨匠ルイジ・コメンチーニ監督(『ブーベの恋人』『パンと恋と夢』 など)によるTVのミニシリーズである。当時2000万人以上のイタリア人がテレビの前に釘付けになったという人気番組だ。

言われてみれば、ネオレアリズモの影響が見て取れる。シエナ郊外のセットには、土埃や砂、木屑が舞い、イタリア庶民の暮らしをリアルに再現している。ピノッキオを生み出すジェペットお爺さんの住まいは貧しく、着ている服はボロそのものだ。それらの質感たるや”衣装”ではなく、本当に着込んだ日常着としか思えない。19世紀の日常を頭で構築せず、美術・衣装スタッフが綿密に考証した上での意匠・衣装だということが分かる。映画の神は細部のディテールに宿るのだ。

ジム・ジャームッシュ監督の『ダウン・バイ・ロー』、フェリーニの遺作『ボイス・オブ・ムーン』、監督、主演を務めオスカーを受賞した『ライフ・イズ・ビューティフル』など、映画ファンには忘れ難い名優ロベルト・ベニーニの哀愁とユーモアの漂う目がアップになった時、「子どもができた!息子だぞ!」と集落に触れ回り、小躍りする姿を見るだけで胸が熱くなってしまう。
ピノッキオには、撮影当時8歳の子役を起用したことからも、ガローネがCGを使わず、人間の熱量、肌感を伝えようとした意図が感じられる。ダークファンタジーと一言で括るのが惜しいような佳編である。
(大瀧幸恵)


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後援:イタリア大使館/イタリア文化会館
2019年│イタリア映画│シネマスコープ│上映時間:124分│映倫区分:G│
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
copyright 2019 ©ARCHIMEDE SRL - LE PACTE SAS
公式サイト:https://happinet-phantom.com/pinocchio/
★2021年11月5日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ ほか全国ロードショー


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