スパゲティコード・ラブ

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監督:丸山健志
脚本:蛭田直美
撮影:神戸千木
主題歌:三浦透子「Never」(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)
出演:倉悠貴 三浦透子 清水尋也 八木莉可子 古畑新之 青木柚 xiangyu 香川沙耶 上大迫祐希 三谷麟太郎 佐藤睦 ゆりやんレトリィバァ 土村芳

フードデリバリーの配達員・羽田天(倉悠貴)は配達を1,000回することで、好きなアイドルへの思いに区切りをつけようと考えている。桜庭心(三浦透子)はシンガー・ソングライターを目指していたがそれを諦め、苦手な友達とダラダラと過ごしていた。大森慎吾(清水尋也)が登録しているFacebookには5,000人以上の友人がいるが、本当の友人は一人もいなかった。

まるで散文詩のような映画だ。仏ヌーベルバーグ作品群と出会った時に感じた新鮮さ。映画の文法は脇に置いて、表現したいこと、呟きたい言葉を並列に並べてみる。引用もOK。登場人物たちの感情のままにに紡がれるストーリー。米国ビートニク世代の作家ウィリアム・バロウズが、文章をバラバラに刻んでランダムに繋げる「カットアップ」という手法を用いた作品を想起させる。
本作に出演している若い世代は、ヌーベルバーグやバロウズと言ってもピンとこないかもしれない。だが、表現者としての系譜は時代や国境を超えて受け継がれる。もし、現代では理解し難い映画と受け取られても、PVの如く流れる心地好い作品、2021年でなければ得られなかったという評価はあってもいい。

「スパゲティコード」とは、解読困難な程、複雑に絡み合ったプログラミングコードのことを指す。一見、無関係に思える 13人の物語は、互いにすれ違い、複雑に絡み合って行く。怒りを放つ者、諦める者、歌う者、死へと向かう者、諦観を決める者、引きこもる者、表層の華美を追う者、叫ぶ者、占いに支配される者、幸せから見放される者、将来はノープラン…。それぞれの思いを胸に溜め込んだ13人が、一つのエンディングに向かって疾走していく。

主役はない。脇役も定かではない。若き日の日常をつぶさに映し撮った丸山健志監督による初長編作だ。CMやPV出身だけに編集のキレが良い。説明過多だったり、冗長な邦画とは対極のスタイルを取りながら、いつの間にか目が離せなくなり、劇伴とシンクロしていることに気付く。
13人の俳優の中で印象に残ったのは、『ドライブ・マイ・カー』の名演が記憶に新しい三浦透子。抑えた演技が光る土村芳。高等遊民のような清水尋也。お笑い色を一掃したゆりやんレトリィバァなど。背景の成育歴が透けて見える脚本に力があるため、13人それぞれを主役にして、連続ドラマが製作できそうだ。
(大瀧幸恵
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2021年製作/96分/PG12/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
製作:All Of Creation
制作プロダクション:PYRAMID FILM
(C)「スパゲティコード・ラブ」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/spaghetticodelove/
★2021年11/26(金)より、 渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開


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