ジギー・スターダスト (原題: Ziggy Stardust and the Spiders from Mars)

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2002年サウンドリミックス・デジタルレストア版
監督:D.A.ペネベイカー
出演:デヴィッド・ボウイ(ヴォーカル/ギター) ミック・ロンソン(ギター/ヴォーカル) トレヴァー・ボーダー(ベース) ウッディ-・ウッドマンジー(ドラムス)

1972年と1973年にアルバム「ジギー・スターダスト」「アラジン・セイン」を発表したデヴィッド・ボウイ。1973年7月3日、「5年後に滅びようとする地球の救世主ジギー・スターダスト」というコンセプトで行ったワールドツアー最終公演が、ロンドンで開催された。そこでボウイは、「ロックン・ロールの自殺者」を歌い始める直前に……。

ボウイは2016年に、訳詞を担った寺尾次郎が2018年、ペネベイカー監督は2019年、そして衣装でボウイを飾った山本寛斎は2020年に……。本作の製作に携わった人々が相次いで召されていった。1973年7月3日、ロンドンはハマースミス・オデオン劇場。「ジギー・スターダスト&ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ」が終焉を告げた日。その場を見届けた観客たち、逝った人らの魂が込められたような渾身のライブ・ドキュメントだ。ファンは、二度と見ることは叶わぬ瞬間にスクリーンで出逢える貴重な機会を逃す手はない。

米国、日本を巡ったワールドツアー凱旋コンサート最終日。会場を幾重にも取巻く長蛇の列。ボウイのウァナビーズ(今でいえばコスプレ?)が多く集い、ロールスロイスが列をなしている。本国へ 戻った楽屋でのボウイは、安堵のためか口笛を吹き、リラックスした表情だ。ヘアやメイクが完成に近づくや、眼に力が漲り始めるのが分かる。

大歓声に迎えられたボウイは、一声の発声で観客を涙ぐませるエネルギーを放つ。”滅びようとする地球の救世主”ジギー・スターダストというロックアイコンを体現するボウイが纏う宇宙的な衣装は、当時27歳の山本寛斎の手による。あらためて先見性を宿したクリエイター同士の幸福な出会いだったと感じた。赤いブーツ、艶めかしく過激な衣装、深い眼窩にただならぬ眼光を宿し、全身に漲る色気から張り裂けるパワーを放つ歌唱は、ライブ映画ならではの臨場感だ。

鮮烈な衣装とメイク、点滅する照明が造形したグラマラスなステージは、50年の時を経て退色は否めない。が、ペネベイカー監督が長年に渡り創意工夫を凝らしたサウンド・ミックスの迫力は衰えを知らず迫ってくる。タイトルの「屈折する星くず」は2曲目だ。続く「あの男を注意しろ」「フリークラウドから来たワイルドな瞳の少年」「すべての若き野郎ども」と聴きつつ、寺尾次郎氏による丁寧な訳詞が、ボウイの世界観を豊かに拡張してくれた。
ふと気付く。ボウイの歌詞は三人称へ向けた内容が多い。地球人に呼びかけていたのだ。当時、子どもだった自分は、歌詞の内容を理解せぬままサウンドに惹かれていたのか…。

「ジギー・スターダスト&ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ」に於いて、ミック・ロンソンのギタープレイが占める役割は大きい。ボウイのサポートに徹しながら奏でるソリッド・ギターの響きはライブ映画に躍動を齎す。ミック・ロンソンのソロプレイ中に、ボウイの楽屋裏が垣間見える。リンゴ・スターが訪問中。ボウイは鋼のような身体に衣装替えを繰り返す。
歌舞伎の影響か、舞台上で衣装を引き抜き、ほぼ裸身を曝け出すボウイ。ウィーピングハープ、 ミック・ロンソンとの絡み。パントマイムは魅せる演出だ。終盤に着るシースルー衣装はボウイを象徴するよう。こうして百万言を尽くしても本作の魅力は伝わらないだろう。ぜひ劇場で体感してほしい。
(大瀧幸恵)


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1973年(サウンドリミックス・デジタルレストア2002年)/イギリス/90分/字幕:寺尾次郎
配給:オンリー・ハーツ
© Jones/Tintoretto Entertainment Co.,LLC
公式サイト:http://ziggystardust.onlyhearts.co.jp/
★2022年1月7日(金)より、Bunkamuraル・シネマ、1/28(金)よりアップリンク吉祥寺 他にて全国順次公開


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