エル プラネタ (原題: EL PLANETA)

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監督・脚本・プロデュース 衣装デザイン:アマリア・ウルマン
音楽:chicken
出演:アマリア・ウルマン、 アレ・ウルマン、チェン・ジョウ /

ロンドンで暮らしていたスタイリストのレオ(アマリア・ウルマン)がスペインの田舎町に帰省すると、母親(アレ・ウルマン)が破産寸前になっていた。しかし、二人はあらゆる手段を用いて、SNSではファッショナブルな生活を送っているかのように取りつくろう。そんな生活が続いていたある日、レオは雑貨店でイケメンの店員(チェン・ジョウ)に出会う。

本作が長編デビュー作。監督・脚本・主演・プロデュース、衣装デザインまでを務めたアマリア・ウルマン。予備知識はなかったが、SNSに投稿したパフォーマンス・アートが評価され、時代を象徴するアーティストとなった。 作品はテート・モダンなどの有名ギャラリーに保存されるなど話題の新時代アーティストだ。

デビュー作は、モノクロの洗練された画像と、ワンカット長回しの躍動的な息遣い、寂れたスペインの海辺、シャッター商店街を歩く老人たちをスケッチ風に捉えた映像が新鮮な印象を齎す。初期ヌーベルバーグやジャームッシュの登場を想起する話法は、大器が登場した予感が鮮明である。

アマリア扮するレオは若く美しく、お洒落な身なりながら、序盤の逸話から深刻な貧困に喘いでおり、実質上の無職・無収入・居宅なしの状態であることが分かる。若い女性の置かれている環境、レオを上回る現実逃避型の母との2人暮らしを切り取る映像は衝撃だ。しかし、能天気な母娘が醸し出す浮遊感そのままに、映画は淡々とユーモアを交えて物語を紡いでいく。

アルゼンチン出身でスペイン移民のアマリアが育った田舎町が舞台。母役はアマリアのリアルお母さんだ。貧しかった幼少時代、スペインの繁栄から取り残されたように打ち捨てられた海辺。そういった設定は自身の生育歴をプラットフォームとしつつ、母娘の人物造形は、”キャラクターは全て純粋な虚構である”とアマリア自身が語っている。

だとしたら、本作に限っていえば、母は名女優だ。電気が止められている程の困窮にもかかわらず、ゴージャスな毛皮を纏い、高級レストランではツケ払い。「皇太子賞(マーティン・スコセッシが受賞した)授賞式に参列する、とのたまい、ドレスを新調したり、万引きはする。ロウソク生活の中、アパートの踊り場で本を読んでいるレオを呼びつけて、「豊胸したのよ!」とオレンジを胸に挟んで笑わせる。こうした天然過ぎる母親の行動が、あの呆気なく余韻を排した驚くべき結末への伏線になるのだ。見事な脚本である。
初お目見えのアマリアが、世界へ向けて高らかに監督デビューした本作には一見の価値があろう。
(大瀧幸恵)


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2021年/82分 / アメリカ・スペイン / 英語・スペイン語 / モノクロ / 1:1.85/5.1ch / 字幕: 小尾惠理 /
配給:シンカ SYNCA /
提供: シンカ、シャ・ラ・ラ・カンパニー
© 2020 El Planeta LLC All rights reserved
公式サイト:https://synca.jp/elplaneta/
★2022年1月14日(金)より、渋谷WHITE CINE QUINTO、新宿シネマカリテほかにて公開


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