ギャング・オブ・アメリカ (原題:LANSKY)

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監督・脚本:エタン・ロッカウェイ
出演:ハーヴェイ・カイテル『レザボア・ドッグス』/サム・ワーシントン『アバター』『ターミネーター4』/ジョン・マガロ 『オーヴァーロード』

1981年、マイアミ。作家のデヴィッド・ストーン(サム・ワーシントン)は、伝説のマフィアであるマイヤー・ランスキー(ハーヴェイ・カイテル)から「俺が生きているうちは、誰にも読ませるな」という条件と引き換えに伝記の執筆を許される。インタビューを進め、貧しい幼少時代や同じマフィアのラッキー・ルチアーノとの接点、暗殺者集団「マーダー・インク」結成などについて聞かされるデヴィッド。取材も終盤に差し掛かったころ、ランスキーの資産を捜査するFBIが彼に接近する。

「俺は数字に強い。バグジーは名前の通りイカれた奴だ。腕力が強い。女よりも殺しが好きなくらい。ラッキー・ルチアーノは取引に強いな」
と、ギャングそれぞれの”適性”を説明するのは、年老いた伝説のマフィア、マイヤー・ランスキー。扮する名優ハーヴェイ・カイテルの顔に刻まれた深い皺、荒れた肌、薄い毛髪、苦悩の色が滲む眼光、絞り出すダミ声、食事をする佇まい全てが本物のギャングに見えてくる。

ギャング映画は米国のお家芸?とも思えるほど多くの作品を目にしてきた。が、多くはフィクションである。派手な撃ち合い、大立回り、スタント前提のカーアクション、ハイスピードカメラやライティングに凝ったグラマラスな映像はそれなりに見応えがあり、エンターテイメントとして楽しんできた。

本作で展開される物語が真実だとしたら、ギャングの置かれた境遇、人生の想像を絶するほどの凄惨さに慄然とせざるを得ない。幼馴染みも家族、友人、知人、国家からも見棄てられ、孤独を託つ最期。ランスキーの慟哭が聞こえ、寂寥を湛えた背中を見せる頃には、観客はそれがランスキーか、ハーヴェイ・カイテルなのか、混然としているだろう。ランスキーが自身の半生を語る度、恐怖で仰け反りそうになる。血塗られた壮絶な体験があまりに身近過ぎるのだ。

裏社会を稼業とし、それで大成功を収めつつも、自らのルーツを、愛国心を希求して止まないランスキー。ロシア系ユダヤ人として、戦時中は米国政府の依頼によりスパイ撲滅に協力した事実がありながら、脱税容疑で手配。
イスラエル建国に向け、多額な資金と武器を提供。
「このご恩は忘れません」
と言ったイスラエル側からは追放される。
FBIはランスキーの”隠し資産”の在り処を探す。汚れ仕事を担った男の功績は報われず、狙われているのは金だけなのだ。

ランスキーの伝記を著すべく、余命の迫ったギャングに取材するストーン役は、サム・ワーシントン。エタン・ロッカウェイ監督(脚本)の父が、ストーンのモデルになっているという。ストーン自身も家族と別れ、FBIに取引きを求められる苦境にある。取材が行われた1980年代と、ランスキーが語る1910年代以降の物語が交錯する展開になっているが、没入感を削ぐ構成でもある点が惜しまれる。
(大瀧幸恵)


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2021年/アメリカ映画/英語/119分/シネマスコープ/
提供:ニューセレクト/
配給:アルバトロス・フィルム/ R15+
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公式HP:https//gang-of-america.com
★2022年2月4日(金)より、新宿バルト9ほかにて全国ロードショー


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