ホテル アイリス

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監督:奥原浩志
製作:北京谷天傳媒有限公司 長谷工作室 紅色製作有限公司
プロデューサー:李鋭 / 奥原浩志 / 陳宏一 / 浅野博貴 / 山口誠 / 小畑真登
原作:小川洋子(©幻冬舎「ホテル・アイリス」)
攝影:ユー・ジンピン(余靜萍)
音響:チョウ・チェン(周震)
美術:金勝浩一
衣装・メイク:KUMI 花井麻衣
音楽:スワペック・コバレフスキ
出演:翻訳家:永瀬正敏、マリ:陸夏(ルシア)、母親:菜 葉 菜、甥:寛 一 郎、甥の母親:大島葉子、父親:マー・ジーシャン(馬志翔)、おばさん:バオ・ジョンファン(鮑正芳)、売店の男:リー・カンション(李康生)

海沿いのリゾート地。日本人の母親(菜 葉 菜)が営む「ホテル アイリス」を手伝うマリ(陸夏)はある嵐の夜、ホテルで女に暴力と罵声を浴びせる男(永瀬正敏)と出会う。ただならぬ状況に動揺しながらも、彼女は男の振る舞いに強く惹(ひ)かれていた。その男はロシア文学の翻訳家で、離れ小島に独りで暮らしているという。父親(マー・ジーシアン)が事故死した過去を引きずるマリは、導かれるように男が住む島へ向かい、二人だけの濃密な世界に溺れていく。

始まりは、いつ、どこで、誰…といった説明はない。亜熱帯性と思しき、湿った空気が流れる土地だ。寂れた海辺の店でラムネを買う娘。 〝ホテル アイリス〞と書かれた白い建物に情動的な弦楽音が聴こえてくる。アンニュイなムードの中、娘は嵐の夜に起こった男との回想に浸って行く。

「このあたりのホテルにはみな、 海にちなんだ名前が付けられている。なのにここだけがアイリスだ。」小川洋子の原作には、このように紹介されるホテルが舞台である。交わされる会話は中国語と日本語。どうやら、かつては外国人も訪れ、栄えた海辺のリゾート地だったらしい。娘は路地から路地へと歩いて行く。バンドネオンを弾くストリートミュージシャンとは顔馴染みのようだ。

ホテルの雑用を担う娘は、女主人である母から
「お前は嘘つきだね!」
罵声と暴力を浴びせられる。諦念を抱いたような娘の顔に喪失が色濃く漂い始める。路地を運ばれる父の死体。娘は父性を追い求めているのか…。

娘は嵐の夜、出会った男と再会する。
「貴女は桟橋から手を振ってくれましたね」
ロシア語の翻訳家と称する男と関係を持つようになる。逢瀬を重ねる度、熱を帯びてくる情念。男からの手紙を心待ちにする娘。待合せ場所を指定されるや、突風の如く飛び出して行き、渡し舟に乗り、男が住む島へと向かう。
男に愛撫されるままの娘。下着を切られ、「靴下を口で脱がせろ」と指示される。主従関係は男が上位に立つ。緊縛、放置といったプレイが続くうち、娘は自身のマゾヒステリックな嗜好に目覚めて行く。

父の死に纏わるイメージとリアルに起こる殺人事件。男は事件に関わっているのか?色香を発散する母は?暗い官能が横溢する映画は、やがて生と死の間(あわい)を行き来するようになる。
「貴方は誰?」
「言え! 貴方は私だ。 憎いか?愛しているか?」
スカーフで首を絞められる娘。

終始、現実と妄想、生と死が曖昧模糊とした空間の中で、男は本当に存在したのか?全ては幻想だったのか?観客に問いを投げかける話法は、桟橋や路地裏、さざめく波のモチーフと共にニュアンスが膨らんでいく。それにしても、永瀬正敏が演じると過激な性愛シーンも上品に見えるから不思議だ。
(大瀧幸恵)







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2021年|日本・台湾合作|100分|日本語・中国語|ビスタサイズ|5.1ch|DCP・Blu-ray
配給:リアリーライクフィルムズ+長谷工作室 
©長谷工作室
公式サイト:http://hoteliris.reallylikefilms.com/
★2022年2月18日(金)より、新宿ピカデリー|ヒューマントラストシネマ渋谷|シネ・リーブル池袋 他にて公開

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