監督:曽根剛 脚本:上田慎一郎
劇中演劇脚本:小室好司 地元劇団:久慈市民おらほーる劇場 音楽:鈴木伸宏、伊藤翔磨
助監督:高田真幸、大川祥吾 監督補:犬童一利 制作担当:内藤由美 録音:鳥井祐樹
主題歌:Awich「One Day」 (ユニバーサル ミュージック)
エグゼクティブプロデューサー:井上裕、坂岡功士、有馬一昭、宇治重喜
制作プロデューサー:源田泰章
プロデューサー:奥出緑、小川貴弘、村上凌太、田中茂裕、梶原剛、中福島健斗
出演:マイケル・キダ Awich 毎熊克哉 片山萌美 ライアン・ドリース ルナ 中村優一 アレキサンダー・ハンター 西尾舞生 / 渡辺裕之
東日本大震災のドキュメンタリーを作るため来日したアメリカ人の映像ディレクター、スティーブ(マイケル・キダ)は取材のため被災地を訪れ、そこで見た演劇に触発されコメディー映画を撮ることを決意する。しかし、いまだに震災の爪痕が残る現状を目の当たりにするとともに、部外者であるアメリカ人が震災を映画の題材とすることへの地元住民の反発や、週刊誌のバッシングに遭う。一方、震災で息子を亡くしアメリカ・ロサンゼルスに移住した日本人シンガーの麗子(Awich)は、歌のせいで息子を亡くしたという罪悪感に苦しんでいた。
2011年3月11日14時46分、あなたはどこで何をしていただろうか?
そう問われて記憶を辿れば、百人百葉、様々な場面が瞬時に蘇ることと思う。
今から8年前、『カメラを止めるな!』監督の上田慎一郎は、撮影を担った曽根剛から、”あの日”のことを描いたコメディ映画の脚本を依頼された。
「不謹慎にならないか。被災者を傷つけてしまうのでは?」
上田氏に、災害をコメディで描くことへの躊躇いや逡巡があったのは容易に想像がつく。脚本は14稿を重ねたという。最終的に、コメディ映画が得意な外国人監督に、東日本大震災のドキュメンタリーを撮らせたら…というアイデアに落ち着いたのは、秀逸な発想だったと思う。
伏線を周到に張り巡らせ、異なる世界に生きる人々が有機的に繋がる邂逅が、面白可笑し紡がれて行く。
型に嵌らない作品を撮ってきた曽根剛監督と、社会現象まで巻き起こした映画で頂点を極めた上田氏。2人がタッグを組んだ作品なのだから、良い意味で破綻したドタバタのコメディを想像したら、意外にしんみりとしたヒューマンドラマに仕上がっていた。
個人的には、『カメ止め!』級に拍手が起こるほどの大爆笑や、コンプライアンスぎりぎりの線まで攻めても良かったのではないかと感じた。
理由は理解できる。制作過程で被災地を、現地の人たちを取材すればするほど、笑う気持ちなど失せるのだろう。でも、笑いが齎らす力を信じ、被災者の人たちからも、「コメディを作ってほしい。楽しい映画にして」と背中を押して貰ったのであれば、踏み出す勇気を持って欲しかった。
「忍者連隊」の劇中劇が、子どもたちを喜ばせたように、エンターテイメントは”生きるために必要”なアイテムなのだ。決して「不要不急」ではないはず。拾えば面白い逸話はあったような気がする。
卑近な例で恐縮だが、以下は阪神淡路大震災の際に、実際に目撃した場面である。
家が倒壊し、確か母親と20代と思しき息子さんが家に閉じ込められてしまっていた。生中継を固唾をのんで見守っていた時だ。自衛隊や消防団などの救助のかいがあり、2人は無事に救出された。
息子さんは若かったせいか、意外にスタスタと元気そうに歩いて出てきたのだ。
「ほらほら、せっかくカメラが撮っとるんやさかい、ちょっとは痛そうにせんかい!」
と野次馬(ご近所で救出を手伝っていた方々)たちの声。息子さんも期待に応え、
「あぁ、うぅ〜」
と胸を押さえ、大げさによろけて歩き出す。
「そや、そや!」
囃し立てる野次馬。調子に乗って続ける息子さんに
「もう、エエわ!」
まるでコントのようなやり取りに場は和み、視ているこちらも爆笑してしまった。助かって良かった、笑うっていいな、ユーモアは人を元気にする。涙ぐみつつ心から明るい気持ちになった思いが今でも忘れられない。
生きているから笑えるのだ。明るく前を向いて復興する途上を見れば、逝った人々も安心して報われるのではないだろうか。コンプライアンスが厳しく、表現が萎縮傾向にある昨今。2人のクリエイターには、人々に生きる勇気を与える笑いの世界に誘ってくれることを期待したい。
(大瀧幸恵)
製作:映画「永遠の1分。」製作委員会(テレビ東京メディアネット、イオンエンターテイメント 、G-STAR.PRO、US corporation、 源田企画、LILYFILM)
制作プロダクション:源田企画
配給:イオンエンターテイメント
助成:文化庁「ARTS for the future!」
特別協力:久慈市 協力:宮古市、陸前高田市、野田村、岩泉町、釜石市、大船渡市、気仙沼市、石巻市、南三陸町、女川町、東松島市、松島町、いわき市
2022年/日本/97分/カラー/シネスコ/5.1ch/
(C)「永遠の1分。」製作委員会
公式サイト:https://eien1min.com/
★2022年3月4日(金)より、公開
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