TITANE/チタン (原題:TITANE)

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監督:ジュリア・デュクルノー(『RAW〜少女のめざめ〜』)
出演:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル

幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴィンセントと出会う。10 年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた。

ジュリア・デュクルノー監督の時代が来たか?!
長編デビュー作『RAW 少女のめざめ』の鮮烈さで世界を圧倒して以来、2作目が昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。噂に違わぬ破壊力にまたしても打ちのめされた!前作を凌駕する苛烈な身体性、女性特有の生理的痛痒、エロス、倒錯、加虐性、原罪…。それに、母性回帰願望や西欧的宗教観を背景にした衝撃作だ。

ビジュアルに至ってはショットごとの強度が圧倒的だ。綿密な構築性、エロスと倒錯愛をモチーフとしながら、決して品性を失わないスタイリッシュさと高貴さ。映画は著作物であるから、製作者自身の心映えが如実に出る。製作者の欲やマーケティング市場などに忖度した性描写、女優の身体をモノ扱いしたような作風は直ぐにバレるものだ。デュクルノーは、独創的な発想と豊かな表現力を持つ真のクリエイターだと断言できよう。

少女の自我の目覚めと歩調を合わせた前作に比べ、本作の主人公は既に”覚醒”した大人だ。自身の指向性、心の暗部に巣食う原罪、潜む粗暴な血、衝動、ジェンダーを超え、”種をも超えた”愛欲を十分に自覚している。冒頭から、本物のポールダンサーかと思わせる靱やかな身体の動きで魅了したアガト・ルセルは、映画初出演だという。「この役は無名の人でなくてはいけない」という監督が、インスタグラムで見つけ出した直感は大正解だった。
強靭さと哀愁、孤独、聖性、可笑しみを持ち合わせ、ジェンダーレスな魅力をスクリーンから食み出す程の魅力を発散させたルセルの存在態様は圧巻である。

登場する車体の何れもがエロティックだ。メカニックな素材の質感を擬人化し、スタイルや動き方までを含め、これほど肉感的に描いた映画があったろうか?主人公と車との交情が結実させる新たな人類の創生。着地点の見事さ、聖母へと昇華するラストスパートには心底、唸った。
ギリシア神話、聖書、バロック絵画などなど、監督が持つ知性と文化的背景が窺われる重層的構成である。

タイトでリズム感があり、緩急のある編集、闇の領域を活かした光線設計、グラマラスな映像表現は完璧だ。
誰もが好感を抱く映画ではない。共感を撥ね付けているともいえよう。が、知性と五感を刺激されまくる体験が待っていることは間違いない。デュクルノー監督に””選ばれ、選んだ”人だけが受益できる映画の愉楽だ。
(大瀧幸恵)


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2021 年/フランス/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/108 分/
© KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020
提供:ギャガ、ロングライド
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/titane/
★2022年4月1日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開

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