フェルナンド・ボテロ 豊満な人生 (原題:BOTERO)

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監督:ドン・ミラー
出演:フェルナンド・ボテロ、フェルナンド・ボテロ・セア、リーナ・ボテロ・セア、ホアン・カルロス・ボテロ・セア

1932年、フェルナンド・ボテロ氏は、コロンビアのアンティオキア州メデジンに生まれる。早くに父を亡くした彼は叔父の勧めで闘牛士養成学校に通うものの、イラストレーターをしながら画家を目指す。ヨーロッパに留学したボテロ氏は、その後メキシコに向かい、ある日そこでマンドリンの絵を描いているときに特別なインスピレーションを得る。

フェルナンド・ボテロの絵画を観た人なら、誰もがそのインパクトにのけぞってしまうに違いない。ボテロが切り取った世界では、全ての物が丸く分厚いフォルムをしているのだ。「モナリザ12歳」は有名なダヴィンチ名画のパロディ。笑える!しかも様々なヴァリエーションまである。何れも見る人を楽しませ、和やかな気持ちにさせてくれる。日本でいえば、岸田劉生の「麗子像」というべきか…。

他にもルネッサンス絵画やキュビズムをボテロ流に模した作品も多く紹介される。単なるパロディではない。確かな画力、観察眼に基づいた名画である。もちろんボテロ自身の独創性溢れる作品、彫刻までもが次々に登場する。その度に、豊かな世界観、ボテロしか描けない作風に魅了されていく。
最も有名なコロンビア人として、存命する巨匠(90歳!)の素顔が余すところなく明かされるドキュメンタリーだ。

ボテロが生まれたコロンビアのメデジンという片田舎では、美術館も画廊もなかった。周囲に“芸術家“と称する人はいなかっただろう。文化的に恵まれていたとはいえない環境から、どうしてボテロのような世界中で愛される画家が誕生したのか?独自の作風はどこからどのようにして育まれたのか?
90歳の気さくな巨匠は、家族たちに囲まれながら、幼年時代の楽しい逸話、父を亡くし貧しかった家庭、強い母のこと、海外へ絵画を学びに飛び出す様を語り尽くす。

同時に、ボテロの子どもたちが制作資料が収められた作品収蔵庫を40年ぶりに開ける場面が挟まれる。中からは、初期のスケッチや貴重な下絵、膨大な資料が発見される。観客にとっても同時に目撃し、心躍る瞬間だ。ボテロがなぜ「ふくよかな」作風を目指して探求をし続けたのか、その痕跡が明らかにされていくようだ。

百万言を尽くしても、ボテロ絵画や彫刻の楽しさを伝えることはできないだろう。ぜひ本作を観て、自身の眼で確認してほしい。今春、日本では26年ぶりとなる大規模展『ボテロ展 ふくよかな魔法』が、Bunkamuraザ・ミュージアムなど全国3ヶ所を巡回する。ぜひ、生の絵画や彫刻に触れ、ボテロの世界に浸ってみたい。
(大瀧幸恵)


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2018 年|カナダ|英語・スペイン語|ビスタ|デジタル5.1|82分|
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム 
© 2018 by Botero the Legacy Inc. All Rights Reserved 
公式HP:http://botero-movie.com
★2022年4月29日(金・祝)より、 Bunkamuraル・シネマほか全国公開

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