劇場版 おいしい給食 卒業

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監督:綾部真弥 
製作総指揮:吉田尚剛 
企画・脚本:永森裕二 
プロデューサー:岩淵規
撮影:小島悠介
出演:市原隼人 土村芳 佐藤大志 勇翔(BOYS AND MEN) 山﨑玲奈 田村侑久(BOYS AND MEN) 登坂淳一 いとうまい子 直江喜一 木野花 酒井敏也

1986年、秋。黍名子中学で3年生の担任を持つ甘利田は、受験シーズンに突入するにも関わらず、給食の献立表のみを気にしていた。学年主任の宗方早苗はそんな甘利田に呆れつつ、彼女自身もある悩みを抱えていた。
そんなある日、甘利田にとって受験以上に気になる事件が浮上する。給食メニューの改革が決定されたのだ。不穏な空気を察知した甘利田は、給食を守るために立ち上がる!果たして受験は?卒業は?進路は?そして、中学最後のうまそげ対決、勝者はどっちだ!?

1986年という時代設定がミソである。給食とは机を班並びにし、級友の顔を見ながら楽しくお喋りしつつ食べるのが常だった。当時は保護者として給食試食会に参加した側だが、自身の頃との献立の変わり様に驚いたものだ。アルマイトの容器ではなかったが…。
本作の甘利田先生のような、給食への熱い思いを剥き出しにする教師がいたら、給食タイムはより美味しく想い出に残るものとなっただろう。小学生の孫たちによると、コロナ禍以降はアクリル板を立て、一言も発してはいけない『クワイエット・プレイス』状態らしい。下の孫に至っては”班”の概念すら知らなかった。パンデミックの存在は学校生活や食習慣を一変させてしまったのだ。

そんな時代に、食への解放感を存分に満足させてくれる本作は楽しいことこの上ない!給食愛が詰まった甘利田先生の一挙手一投足が可笑しくて堪らない。”熱い役柄”が誰よりも似合う市原隼人が、優れた身体能力を活かし、「全身給食」を体現している。ジャンルは異なるが『変態仮面』の鈴木亮平を思い起こさせる。こういう役ほど至極真面目に演じなくてはならないのだ。笑かせよう、ふざけてやろう、といった作為性は御法度である。その意味では、2人の俳優とも演じ方を心得ている。

給食前に唱歌する校歌を歌う時の甘利田先生は世界で一番幸せそうだ。学園ものは数あれど、あれほど校歌の喜悦を表現する先生役は見たことがない。しかも上半身だけの演技で...だ。市原隼人、恐るべし!綾部真弥監督云く
「いちいち細かい演出をつけていないので、お任せ」
だったそうだ。

給食メニュー、配膳を前にした時の内心の饒舌さ加減も笑わせてくれる。飯テロ番組やグルメ映画はあるものの、本来は子どもの栄養・成長に最重点を置かれた給食。本作を観るまで、掘り下げ甲斐がある食事とは考えたことがなかった。

更に面白いのは、給食の献立に異次元のアレンジを加える生徒、神野ゴウへの対抗心剥き出しな点。敵役に扮する佐藤大志の人物造形も市原に負けていない。甘利田先生よりも体温は低そうでいながら、毎回創意工夫を凝らす熱量を淡々と演じる。TVシリーズは未見だが、番組収録中より20センチ以上も身長が伸びた由。成長の過程を確かめたくなった。

甘利田先生と見事な化学反応を起こす共演陣のアンサンブル演技も見もの。元NHKアナウンサーの登坂淳一は、白髪と冷静な佇まいが、管理栄養士に妙にハマっている。何より驚いたのは、‘80年に『3年B組金八先生2』で加藤優役として忘れ難い直江喜一の登場である。教育委員会というよりも、土建屋のおじさんか、地元利益誘導の政治家的面構えだが、甘利田先生や神野ゴウの対抗役には申し分のない存在感だ。
先日ご紹介したドキュメンタリー『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』 で思い知らされた通り、本作は配役面での創意工夫が稀少喜劇を成功へと導いたに違いない。
(大瀧幸恵)


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2022/日本語/5.1ch/ドルビーデジタル/104分/
配給:AMGエンタテインメント
Ⓒ 2022「おいしい給食」製作委員会
制作プロダクション:メディアンド 
企画・配給:AMGエンタテインメント 
配給協力:REGENTS 
製作:「おいしい給食」製作委員会
公式HP:https://oishi-kyushoku2-movie.com/
★2022年5月13日(金)より、新宿シネマカリテほか全国公開

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