a-ha THE MOVIE (原題:a-ha: The Movie)

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監督・製作・脚本:トマス・ロブサム
共同監督・撮影:アスラウグ・ホルム
製作:イングヴィ・セーテル
編集:ヒルデ・ビョルンスタット
出演:モートン・ハルケット、ポール・ワークター、マグス

1982年のノルウェー・オスロ。モートン・ハルケット、ポール・ワークター、マグスの3人の若者が、国際的なポップスターを夢見てシンセポップバンドを結成する。1984年にデビュー曲として世に出た後、翌1985年にアレンジバージョンがリリースされた「TAKE ON ME」は世界中を魅了し、彼らは一躍スターダムにのし上がる。その後も次々とヒット曲を世に送り出す一方で、メンバーの関係に亀裂が生じてしまう。

世界を席巻した「TAKE ON ME」は、1980年代ポップシーンを代表するスタンダードナンバーなのではないか?独特なリズムを刻むイントロ、軽快なメロディ、甘く透き通ったファルセットヴォイスによるサビ、そして何より革新的だったあのMTV!何十回繰り返し見たことだろう。ワンカットワンカット全て覚えている。誰しもの心に、一度見たら忘れ得ない強烈な印象を残したはずだ。

a-ha…。バンド名を口にしただけで懐かしさがこみ上げる。3人が来日した時は大人気で、当時はまだ多かった音楽TV番組に出演していた。ロック界やポップシーンでは、「辺境の地」だった頃のノルウェーから初めて世界に飛び出したバンド。日本のファンにとっては、スウェーデンからやってきた『ベニスに死す』のビョルン・アンドレセンのような神秘性を感じていたかもしれない。商業ベースに乗った米国バンドと違い、メディア擦れしていない素朴さも魅力だった。

あれから40年…。未だに陳腐化しない「TAKE ON ME」のメロディを耳にする度、どうしているのだろう?と気にかかっていた。このドキュメンタリーを観て安心した。解散はしたものの、彼らは未だに世界を回る人気ライブバンド!現役のミュージシャンとしてアルバムを出していたのだ。少女マンガから抜け出したような容姿は、あの頃のまま…とは言わないが、贅肉がついたわけでもなく、きちんと歳を重ね、素敵なおじさまになっていた。ファルセットヴォイスも健在である。

アイドル的な扱いをされてしまったが、U2、オアシス、カニエ・ウェスト、ウィーザー、エコー&ザ・バニーメンなどが、a-haから影響を受けたことを公言する。「もっともっと評価されて良い」とも語っている。本作の公開を機に再評価の兆しが見える気がする。エコバニのイアン・マッカロクなどは、監督に「ザ・スミスよりもいい」と言ったとか…。

本作では、モートン・ハルケット、ポール・ワークター=サヴォイ、マグネ・フルホルメンの3人とも、若い時から純粋に音楽に取り組んでいたこと、特にマグネとポールは楽曲製作に真摯に打ち込んでいた様子(今も)などが丁寧に描写される。
「「TAKE ON ME」のリフは14歳で書いた」
と 当時の音源も紹介される。オスロでの生活の再現方法は、あのMTVに倣ったアニメーションなのが嬉しい。

彼らのヒット曲が網羅される。一部には“一発屋”と思われているが、「メモリアル・ビーチ」、「ステイ・オン・ディーズ・ロード」、「ハンティング・ハイ・アンド・ロウ」などなど、豊かなメロディラインを持つヒット曲は多い。
3人は、「ノルウェーはヨーロッパ辺境の地。国の経済自体がが停滞していた。ダンス音楽が人気だった程度。 国外で活躍した人はいなかった」
と語っている。
そのような中、地道に曲を作り続け、ライブ活動を行い、レコード会社との契約を待ち望んでいた3人。ストイックな姿勢に別な一面を見るようだった。

「ロンドンへ行こう!」英国を拠点にして世界へ羽ばたこうとしていた野心を抱えた若いミュージシャンを見出したのは、英国のプロデューサーだった。あのサビにも色々なヴァージョンがあったのも驚きだ。結果的には、モートンのファルセットを前面に押し出し、ビジュアル面でも女子ファンを増やすため、マグネとポールは下がり、モートンをセンターに。2人とも、「前に出るのは嫌だったから、モートンがメインで助かった」そうだ。

多く残っていたインタビュー素材でも、地元ノルウェーメディアが
「見た目が良くなかったら売れたと思う?上半身を脱いで」
などと失礼な無茶ぶりをするのには呆れてしまった。モートンは
「君も脱ぐならね」
と軽くかわしていたが…。こんな扱いばかりでは、肉体的疲労だけではなく、精神まで疲弊したことだろう。だが、「1日中でも曲作りしていたい」という音楽への強い意欲、情熱はアイドルとして消費されなかった。目まぐるしい音楽業界の搾取にも負けず、ひたすら音楽で繋がり続けた3人。a-haの名に恥じない共同体の生々しい真実が映し撮られた本作は、ファン以外にも必見である。
(大瀧幸恵)


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2021年製作/112分/G/ノルウェー・ドイツ合作/16:9/ノルウェー語・英語・ドイツ語/5.1ch/
レイティング:G
配給:クロックワークス
(C) MOTLYS, FENRIS FILM, KINESCOPE FILM, NEUE IMPULS FILM 2021
公式サイト:https://klockworx-v.com/a-ha/
★2022年5月20日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開

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