バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー (原題:SUPER-HEROS MALGRE LUI 英題:Superwho? )

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監督:フィリップ・ラショー
脚本:フィリップ・ラショー、ピエール・ラショー、ジュリアン・アルッティ、ピエール・デュダン
撮影:ヴァンサン・リシャール
音楽:マキシム・デプレ、ミカエル・トルディマン
製作:フィリップ・ラショー、ジュリアン・デリス、デヴィッド・ゴーキェ
出演:フィリップ・ラショー、ジュリアン・アルッティ、タレク・ブダリ、エロディ・フォンタン、アリス・デュフォア、ジャン=ユーグ・アングラード『ベティブルー 愛と激情の日々』、アムール・ワケド『ワンダーウーマン1984』

父の反対を押し切って夢を追い続ける売れない役者のセドリック(フィリップ・ラショー)は、晴れて新作映画『バッドマン』の主役に抜てきされる。憧れのヒーロー映画主演のチャンスを逃すまいと、彼は体を鍛え、武術をマスターして撮影に臨む。しかし、初日の撮影終了間際に父が倒れたという連絡が入り、動揺したセドリックは衣装の「バッドスーツ」を着たまま「バッドモービル」に乗り、病院へ向かう途中で事故に遭ってしまう。やがて意識を取り戻したとき、彼は自分の名前や過去の記憶を失っていた。

日本の人気漫画「シティーハンター」のフランス版実写化や、『真夜中のパリでヒャッハー!』など『ヒャッハー!』シリーズでお馴染みのフィリップ・ラショー監督が主演と共同脚本を務める本作。期待に違わず3分に1回は笑かしてくれる!

題名からお分かりの通り、超有名アメコミヒーローものの壮大なパロディである。のっけから如何にも いかがわしい女プロデューサーが現れ、「あなたこそ主役よ!」と(誰にでも^^;)言ってのける。売れない俳優が本命俳優のドタキャンによりキャスティング。チャンスが巡って来るのだが…。

本題に入るまでにも細かなギャグネタが仕掛けられ、よくぞマメに作るものだと感心してしまう。テイストはB級だけれど、セットや衣装、小道具、大道具には惜しみなく予算をかけていることが分かる質感の高さ。喜劇だからとて手を抜かないところが、ニクい。ジョーカーもどきの”ピエロ”や本物の凶悪犯が登場するアクションシーンは、驚くほどの完成度を示す。
ラショー自身、
「壮大なギャグはたいてい複雑で、計画、創作、実行は高くつくんだけれど、僕たちのDNAに組み込まれたものなんだ」
と語る。そう、仏製コメディの系譜を確実に継承しているのだ。

しかも、たたみかけるギャグはギリギリの際どい線!子どもや猫だって容赦なく酷い扱いを受ける。あのトム・クルーズにしても、弱い立場で庇護されるべき移民さえもギャグのネタにされる。仏だから許されるのだろう。日本やハリウッド映画なら
「虐待?コンプライアンス!コンプライアンス」
なんて真っ先にカットされるところだ。修道士が或る注文品を受け取って、
「少年サイズが良かったのに…」
と呟く場面では、あまりのブラックユーモアさ加減に仰け反ってしまった!カソリック宗国でよくぞ作ったものだ。こういうキツいギャグも仏流の上品なフィルターにより、オシャレ感すらが漂ってしまう。

ラショーは、サム・ライミ版の『スパイダーマン』が好きらしい。逆さまのキスシーンなど、元ネタを知っている人にはクスッと笑える場面が随所に仕掛けられている。見つけては楽しんでほしい。各種ガジェットも、まるで『ホームアローン』のように細かく途切れない造作力には感心するばかりだ。

「観客が満足して、”面白かった。元は取れたよ”と言うことが基本」
だと語るラショー。サービス精神が旺盛なのだ。大の大人がスーパーヒーローごっこをする無邪気な子ども感のある本作。今夏は『キャメラを止めるな!』との仏製コメディ2本立てで暑さを吹っ飛ばすのも良いだろう。
(大瀧幸恵)


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2021年/フランス・ベルギー映画/フランス語/83分/シネスコ/5.1ch/映倫G
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
©CINÉFRANCE STUDIOS - BAF PROD - STUDIOCANAL - TF1 STUDIO - TF1 FILMS PRODUCTION
公式サイト:https://badman-hero.com
★2022年7月15日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国公開


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