監督・脚本・製作・編集:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ロマン・デュリス(レミー/日暮)ベレニス・ベジョ(ナディア/ナツミ)グレゴリー・ガドゥボワ(フィリップ/細田)フィネガン・オールドフィールド(ラファエル/ケン)マチルダ・ルッツ(アヴァ/チナツ)ジャン=パスカル・ザディ(ファティ)竹原芳子(マダム・マツダ)
日本で大ヒットしたゾンビ映画がフランスでリメイクされることになり、ワンカット撮影で30分間の生放送を依頼されたフランス人監督(ロマン・デュリス)。撮影には監督を志しているが空気の読めない彼の娘、熱中すると現実とフィクションの区別がつかなくなる妻(ベレニス・ベジョ)も加わり、現場は大混乱に陥ってしまう。問題続出の製作チームは、全く話のかみ合わない日本人プロデューサー(竹原芳子)とぶつかり合いながら撮影に奮闘する。
やっぱり笑えた!最高です(笑)。フランスでは“名匠”と言えるほどのミシェル・アザナヴィシウス監督が、日本オリジナル版を尊重してくれたことが何よりも嬉しい。と同時に、世界に通じる娯楽作を生み出した日本製作陣を誇らしく思えた瞬間でもあった。
『アーティスト』をはじめ、遊び心旺盛なアザナヴィシウス監督は、喜劇の勘所をちゃんと押さえている。日本版でも圧倒的な存在感を示した無茶ぶりプロデューサー役・竹原芳子を本作にも配役したことからしてコメディセンスが伝わる。しかも、あの大阪弁まんまで登場するのだから堪らない!
無茶ぶりは、更に先鋭化して登場人物たちの役名は日本名で、如何なる変更もまかりならんと指示。仏語は分からないのに、監督がうっかり口を滑らせた「真珠湾を攻撃したくせに」という言葉も聞き逃さず、毅然とした態度で嫌味を吐くシーンは爆笑だ。
今年の第75回カンヌ国際映画祭オープニング作品としてワールドプレミアした際は、上映中から拍手喝采、爆笑に包まれたというから、オリジナル版の奇想天外な発想の裏に潜む緻密さ、巧みな構成、計算し尽くされた台詞や動きが、目の肥えた観客たちにも伝わったのだろう。
日本版のB級感はそのままに、ロマン・デュリス、ベレニス・ベジョといった超A級大スターの他、フィネガン・オールドフィールド、ルアナ・バイラミ(『燃ゆる女の肖像』使用人役)ら、若手実力派も配役され、ぶっ飛んだ演技を見せてくれるのだから痛快この上ない。
ある意味、日本版をベースに、それを捻った形で翻案された脚本のため、オリジナルを愛する日本人には更に笑えるかもしれない。ネタバレができないので、内容には触れずにおこう。ただ、お国柄の違いは観られる。合理性を重んじるフランスだけに、表情や間といったニュアンスよりも、言葉による説得、説明部分は多いかもしれない。
ラストは、やはりお国柄の違いか、日本版のほうがさりげなく奥ゆかしい余韻を残してくれる。本作はあくまで分かりやすくまとめた印象だ。仏語を解さない移民、難民への配慮かもしれない。最後にオマケの場面があるので、エンディングが終わっても見逃さないように!
(大瀧幸恵)
2022年製作/112分/G/フランス/シネマスコープ/5.1chデジタル
配給:ギャガ
提供:ギャガ、ENBUゼミナール
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公式サイト:https://gaga.ne.jp/cametome/
★2022年7月15日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開
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