チャーリー・イズ・マイ・ダーリン (原題:The Rolling Stones: Charlie Is My Darling - Ireland 1965)

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監督:ピーター・ホワイトヘッド

1965 年 9 月 3~4 日のアイルランド・ツアーを追った、ストーンズが記録された初めてのフィルム。2011 年に新たに発掘された未編集未発表のステージ映像など(全体の半分以上)を加えて再編集された 2012 年版が本作。〈サティスファクション〉で全英全米No.1 を獲得し、勢いにのる若きストーンズの熱狂のステージとともに、彼らが世界的なスーパースターとなる直前のツアー中の飾らないオフショットやインタビューなどが収められている。同じ 65 年にボブ・ディランのイギリス・ツアーを追いかけた D.A.ペネベイカー監督の『ドント・ルック・バック』と並ぶ、時代を画した傑作ライヴ・ドキュメンタリー。

昨年8月24日に80歳で亡くなったザ・ローリング・ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツを偲び、新たに発掘された未編集未発表のステージ映像などを加えて再編集されたドキュメンタリー。1965年 9月 のアイルランド・ツアーを追っている。若い世代にとって、‘60年代は未知の世界だろう。が、往年のファンには涙が出るほど貴重な映像ばかりのお宝ロックムービーなのだ!

白黒の荒れた(ように見える)映像の中に、確かに息づく20代のミック・ジャガー、存命していたブライアン・ジョーンズ(涙!)、キース・リチャーズ、ビル・ワイマン、そして寡黙と思っていたチャーリー・ワッツのお茶目な表情も...。今年、結成 60 周年を迎えたばかりのストーンズ。本作は偉大なる道を歩み始めた頃のストーンズを”拝める”至福の63分である。

当初よりステージシーンを追加したというライブ演奏の臨場感が半端ではない。少しも陳腐化することのない初期のヒット曲。「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」「サティスファクション」「アイム・オールライト」「エヴリバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ~ペイン・イン・マイ・ハート」♪
今では考えられないことだが、ステージ上にファンがどんどん駆け上がってくる。混乱極まる状況ながらも演奏を続けるメンバーは凄い 。アイリッシュのファンたちも熱い!

「僕たちに触ったって自慢したり、暴れたりしたいらしいよ。ビートルズが反権力の象徴とは思わないけど、彼らも西ドイツで同じ目に遭ったからね」と冷静に語るミックが大人びて見える。やんちゃな印象はない。コットンのボタンダウンシャツに白いジャケット。 不良ぽく見えるとすれば、長髪くらいか?それも現代からすれば、至って”普通”である。反抗的な目付きや言動、セクシーなステージアクションが、保守派を不安にさせたのかもしれない。

ライブを観て気付いたことがある。ボーカルのミックを除いて、ステージでの中心はブライアン・ジョーンズだ。前へ出つつファンの歓声も浴びている。合図一つにしても演奏はブライアンを軸に回っている。キース・リチャーズは目立たない。
幼児からストーンズの楽曲は聴いていたが、ブライアンの魅力を分かる年代ではなかったのだ。不審の死を遂げた時、兄たちが大騒ぎしていたのを覚えている。大事件だった。

キース・リチャーズの”萌芽”を予兆させる場面はある。ライブ終了後もメンバーは仲が良いらしく、ホテルの部屋で自然発生的にセッションが始まる。そこでの中心はキースだ。お酒を飲みながら実に楽しそうにピアノを弾き、ギターを爪弾く。ミックやチャーリーらとビートルズの楽曲も歌う。後にストーンズが辿るシンプルでタイトなロックンロールは、キースが牽引していたのかもしれない。

‘60年代アイルランドの風俗も楽しめる。コンパートメントではない(!)列車の車窓から臨む寂し気な景色。凍てつく大地、ケルト十字架、低い丘、田園風景...。車内でも歌い、禁煙表示の前でも堂々と喫煙するストーンズに、乗客らの視線が突き刺さる。
監督はリヴァプール出身のピーター・ホワイトヘッド(2019年没)。ストーンズ周囲の切り取り方や、メンバーのインタビュー映像などに、同年公開の『ビートルズがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!』を意識していたことが分かる。多様な側面からも貴重・必見の映画である。
(大瀧幸恵)


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1965-2012 年/イギリス/63 分
配給:オンリー・ハーツ
(C)2012 Because Entertainment, Inc/ABKCO Films
公式サイト:http://circus-charlie.onlyhearts.co.jp/
★2022年8月5日(金)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開


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