劇場版 ねこ物件

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監督・脚本:綾部真弥
製作総指揮:吉田尚剛
企画:永森裕二
プロデューサー:岩淵規
撮影:小島悠介
出演:古川雄輝、細田佳央太 上村海成 本田剛文(BOYS AND MEN) 松大航也、金子隼也 山谷花純、長井短 竜雷太

クロとチャーという2匹の猫と暮らす二星優斗(古川雄輝)は、唯一の肉親である祖父の幸三(竜雷太)が亡くなったことをきっかけに、猫付きシェアハウス「二星ハイツ」を始める。それぞれ夢を抱いて暮らしていた4人の同居人は、全員次のステージへと旅立ち活躍していた。あるとき、不動産会社の広瀬有美(長井短)に二星ハイツの再開を促されるものの、優斗は気乗りがしなかった。

イケメンと猫が紡ぐハートフルなストーリー...。大方の作品紹介は、猫たちの可愛さや人間賛歌に主題を置くだろう。観客の期待も同じ点にあるのではないか。しかし、個人的には本作にある種の”厳しさ”を感じ取った。決して甘い・可愛い...だけの砂糖菓子物語ではない。先日ご紹介した『劇場版 おいしい給食 卒業』の綾部真弥監督作だ。よく観れば分かる。人間と猫、人間と人間の関係性を結構シビアに描いているのだ。

そう感じさせないのは、猫の目線から追ったローアングルショットの多用。小津安二郎や加藤泰監督のように、日本家屋には低い位置でのアングルが最も安定し相応しいことを理解しているのだろう。本作には猫が登場しない場面も多い。人物だけの会話や行動により物語が進展して行く。食事、居間、居室、縁側…。主人公が引きこもりがちなだけに室内撮影が中心だが、何れも低いアングルである。

最愛の祖父を亡くし、”人ロス”に陥った主人公は、基本的に人間不信だ。
「猫は人生の師匠です」「猫を騙せると思ったら大違い。猫は 人を見抜く」「人間は隠し事をするけど、猫はしない」
こういった言葉、行動、表情の端々からも、主人公は猫にしか心を開いていない人物像だという造形が明白だ。”シェアハウス7箇条”を設け、頑なに住民へ要求することからも、人間に対して厳し目なことが分かる。

それでも尚且つ、本作を観終わった後に温かな気持ちになるとしたら、撮影、照明、美術スタッフらが為す集積ワークの功績だろう。前述した低い位置からのカメラ、柔らかな朝陽が射すキッチン、食卓。食材を美味しそうに映す絶妙なライティング。
ダイニングとリビングを通した空間設計。暖かく心地好い空気が漂う縁側、それに続く庭。川越や川島町、古民家など埼玉の比企地域で行ったロケ地の選択が良い。ちなみに、埼玉県は47都道府県の中で最も晴天率が高いそうだ。ラストの広角レンズ撮影は圧巻だ!

『劇場版 おいしい給食 卒業』が体育会系の市原隼人を主役としていたのに対し、本作は見るからに繊細な古川雄輝が主人公である。ホンワカおっとり、優しい演出話法にしたのは、古川の雰囲気に支配された面も大きいだろう。
長引くコロナ下で貧困状態に喘いだ人が、ペットを飼っているという理由から生活保護を受給できず、福祉担当者より、「処分すれば?」と言われることがあるという。ペットは立派な家族だ。家族を殺さないと憲法で認められた最低限の生活を送れないとは有り得ない道理である。本作のエンディングを観ながら、全てのペットと人間が幸せに暮らせるよう、願った。
(大瀧幸恵)


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2022/日本/94 分/カラー/ビスタ/5.1ch/G
制作プロダクション:メディアンド
企画・配給:AMG エンタテインメント
配給協力:REGENTS
製作:「ねこ物件」製作委員会
(C)2022「ねこ物件」製作委員会
公式サイト:https://neko-bukken-movie.com/
★2022年8月5日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開


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