クリーン ある殺し屋の献身 (原題:CLEAN)

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監督・製作・脚本:ポール・ソレット「キラー・ドッグ」
製作・脚本・音楽:エイドリアン・ブロディ
製作:ダニエル・ソリンジャー、エリオット・ブロディ
撮影:ゾーラン・ポポヴィック
出演:エイドリアン・ブロディ「戦場のピアニスト」/グレン・フレシュラー「ジョーカー」/リッチー・メリット/チャンドラー・アリ・デュポン/ミケルティ・ウィリアムソン「パージ:大統領令」/ミシェル・ウィルソン/ジョン・ビアンコ/RZA「アイアン・フィスト」

深夜の街でゴミ回収車を走らせる、クリーン(エイドリアン・ブロディ)と呼ばれる男。廃品や廃屋の修繕修理を趣味にする寡黙な彼だが、その正体はすご腕の殺し屋だった。あるとき、心を通わせる少女ディアンダが麻薬ギャングに連れ去られ、彼女の救出に向かったクリーンはギャングを徹底的に痛めつける。しかし、その中にギャングを率いるマイケルの息子がいたことから、一転して追われる身に。警察とも癒着するマイケルの組織に追い詰められたクリーンは、銃を手に反撃に挑む。

オスカー俳優エイドリアン・ブロディが、主演の他に製作・脚本・音楽まで手掛け、多才ぶりを発揮した本作。監督は『キラー・ドッグ』でもタッグを組んだポール・ソレット。ウマが合うのだろう。リズム、エモーショナルな展開、ノワール風アクションといった空気感に、ブロディの悲痛な形相、佇まいがしっくり嵌まっている。おそらく、ブロディが描きたかった世界、演じたかった役はこれに違いない。

辺りは漆黒の闇。凍てつく夜の街に雪が舞う。ジャジーなオープニングテーマ にのり、男の独白が始まる。
「俺は答えを探してる。ゴミの海 にいると、心や排水管まで詰まっちまう。擦っても擦っても手の汚れは消せない」
清掃車を運転する寡黙な男は、何を悔いているのか…。贖罪するために、魂の咆哮を続けているようだ。廃品や廃屋の修理をしながら、依存症友の会に参加したり、教会に通う。

画面の質感は粗く、ゴミに埋もれた街の景色は、『タクトー・ドライバー』を彷彿とさせる。心を通わせた少女を手助けする展開も、同作や『レオン』にオマージュを捧げているかの如く、想起させる。2作と異なる点は、ふんだんに挿入されるフラッシュバック。回想シーンから、男の辿ってきた過去、背負う原罪が分かりやすい説明となる。

シンプルな物語のため、筋を追うよりもニュアンスを楽しむ映画なのだ。ブロディは意外にもスタイリッシュなクライムものを好んでいることが分かった。その他の特色としては、宗教色の濃さが挙げられる。敵方のギャングのボスまで告解をし、自らの罪を打ち明ける。非道な行いをしながらも悔い改め、出所した息子の幸せを願う父親なのだ。

『戦場のピアニスト』で暴力になす術もなく、運命に委ねた男を演じたブロディが、本作ではバイオレンスを貫く。タイトルの“クリーン“は、ダブルミーニングだったのだと気付かされる。儚げな体躯の男がビッグサイズの銃を持ち、スパナやハンマーといった身近にある工具でギャングたちを殺戮する様は、画面にリアル感を齎す。ブロディが創作したダークテイストのラップミュージックが、不穏な気配に似つかわしい。
(大瀧幸恵)


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2021年/アメリカ映画/英語/94分/シネマスコープ
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
© 2018 A Clean Picture, LLC All Rights Reserved.
公式サイト:https://clean-kenshin.com
★2022年9月16日(金)より、全国順次公開

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