ダウントン・アビー/新たなる時代へ (原題:DOWNTON ABBEY: A NEW ERA)

16630642952780.jpg

監督:サイモン・カーティス
脚本・製作:ジュリアン・フェロウズ
撮影:アンドリュー・ダン
プロダクションデザイン:ドナル・ウッズ
衣裳:アナ・メアリー・スコット・ロビンズ
メイクアップ&ヘアデザイン:アン・ノシュ・オールダム
出演:ヒュー・ボネヴィル(ロバート・クローリー)、ローラ・カーマイケル(レディ・イーディス)、ジム・カーター(カーソン)、ブレンダン・コイル(ベイツ)、ミシェル・ドッカリー(レディ・メアリー)、ケヴィン・ドイル(モールズリー)、ジョアン・フロガット(アンナ)、マシュー・グード、ハリー・ハデン=ペイトン(バーティ・ぺラム)、デヴィッド・ヘイグ、ジェラルディン・ジェームズ、 ロブ・ジェームズ=コリアー(トーマス)、サイモン・ジョーンズ、アレン・リーチ(トム・ブランソン)、フィリス・ローガン(ヒューズ)、エリザベス・マクガヴァン(コーラ・クローリー)、ソフィー・マクシェラ(デイジー)、タペンス・ミドルトン(ルーシー・ブランソン)、スティーヴン・キャンベル・ムーア、レスリー・ニコル(パットモア)、ケイト・フィリップス、マギー・スミス(バイオレット)、イメルダ・スタウントン(モード・バグショー)、ペネロープ・ウィルトン(イザベル・マートン)、ヒュー・ダンシー(ジャック・バーバー)、ローラ・ハドック(マーナ・ダルグリーシュ)、ナタリー・バイ(先代モンミライユ侯爵夫人)、ドミニク・ウェスト(ガイ・デクスター)

1928年、イギリス北東部にある邸宅ダウントン。グランサム伯爵ロバート(ヒュー・ボネヴィル)らは、他界した三女の夫トム(アレン・リーチ)とモード・バッグショー(イメルダ・スタウントン)の娘との結婚を祝福していた。一方、長女メアリー(ミシェル・ドッカリー)は傷みが目立つ屋敷の修繕費に苦慮していたところ、屋敷で映画撮影をしたいとのオファーを受ける。さらにロバートは、母バイオレット(マギー・スミス)が南フランスの別荘を相続したことに驚き、そのいきさつに疑問を抱いた彼は家族と共に別荘へ向かう。

ときめき、憧れ、癒し、共感、哀切、爆笑、ドキドキ、ワクワク、ハラハラ、好奇心、探究、発見、驚愕、衝撃、感動、涙、安堵、そして最後には多幸感に包まれる...!エンターテインメントとして楽しめる全ての要素を備えた125分だ。観客はあらゆる感情の引出しをこじ開けられ、大好きな世界に没入し、その中で浮遊することができる。ドラマシリーズからのファンは大いに満足して映画館を後にするだろう。
また、初めて『ダウントン・アビー』の世界に触れる人はドラマシリーズの初回から遡って観たくなるに違いない。目まぐるしく現れる登場人物たちの何れにも濃密な深い物語と背景が紡がれてきた。各人を主役に、もう1本映画ができるのではないかと思うほど、造形が彫刻のように彫り込まれているからだ。

脚本・製作はドラマシリーズ生みの親であり、初回からお馴染みのジュリアン・フェロウズ。登場人物全ての見せ場を作り、過去と未来まで考え尽くした構成である。複数のストーリーラインを同時に走らせながら散漫にならず、最後には大団円へと結実させる芸当はフェロウズにしかでき得ない。
監督のサイモン・カーティスは、クローリー夫人役のエリザ ベス・マクガヴァンの夫である。妻と共にプロモーショ ンツアーへ参加したり、ドラマシリーズの最初から”ダウントン・ファミリー”だった。本作をどの監督よりも知り尽くしており、その親密さは温かな暖色を中心とした画面に反映されている。

夫婦ネタといえば、もう一番(ひとつがい)。忠実な執事役のカーソンことジム・カーターと、バイオレットお祖母さまの従姉妹であり、ルーシー(ドレスに注目!)の母モード・バグショーを演じるイメルダ・スタウントンは実際の夫婦だ。この2人をイジった面白い場面が用意されているので、お楽しみに♪フェロウズは本当に遊び心、イタズラっぽさを持った脚本家だ。観客を楽しませる術を心得ている。

今回は屋敷が映画のロケに使われ、1928年の設定からトーキーへと移り変わる過渡期の撮影現場が詳細に描かれる。作中に1875年へと遡及する入れ子構造を成す構成が映画ファンとしては嬉しい。ロケ中にレディ・メアリーと元下僕モールズリーの意外なポテンシャルが発揮される。
監督役のヒュー・ダンシー、美男美女俳優に扮したローラ・ハドック、 ドミニク・ウェストら初登場組も適役だ。

初登場組の南仏リヴィエラチーム、ナタリー・バイと、ベルギー人俳優のジョナサ ン・ザッカイも素晴らしい。バイオレットお祖母さまに拮抗する個性と存在感を放つ名女優バイ。ザッカイについては、中盤からのミステリー挿話を担うサブキーパーソン的な役割だ。ザッカイの表情や振る舞いに注目されたい。

2019年の前作では、英王室を迎える”事件”が中心だった。国王一族を超えるゲストがあるのかと思いきや、ダウントン・ファミリーを陽光燦々たる海外へ連れ出し、屋敷内部には映画の撮影隊がやって来るというアイデア。常に観客の予想や期待の斜め上を行く展開を示してくれるフェロウズと製作陣には脱帽だ。ビジュアル面での変化と共に、フランス貴族との生活差異、別荘内部のインテリア、カジュアルなファッションなど、興味は尽きない。スクリーンで観るに相応しい華やかさは嬉しい驚きである。

毒舌で自由過ぎるバイオレットお祖母さまの、曾孫に対する粋な計らい、映画撮影から垣間見えた新時代の息吹、製作陣は明らかに次世代を見据えている。どうか、これからも続くシリーズであるように、観客を非日常の世界に連れて行って!と祈る気持ちで観終えた。
(大瀧幸恵)


16630643681471.jpg

2022年製作/125分/G/イギリス・アメリカ合作
配給:東宝東和
(C) 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED. (C) 2022 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://downton-abbey-movie.jp/
★2022年9月30日(金)より、全国にて公開


この記事へのコメント