プリンセス・ダイアナ (原題:THE PRINCESS)

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監督:エド・パーキンズ
製作:サイモン・チン、ジョナサン・チン 
編集:ジンクス・ゴッドフリー(アメリカ映画編集者協会会員)、ダニエル・ラピラ
音楽:マーティン・フィップス
出演:ダイアナ妃 、チャールズ皇太子 、エリザベス女王 、カミラ・パーカー=ボウルズ 、フィリップ王配 、アン王女 、ウィリアム王子 、ヘンリー王子 、エリザベス王妃、クィーン・マザー

1981年、イギリスのチャールズ皇太子はスペンサー伯爵の令嬢、ダイアナと結婚する。二人の息子が誕生し、幸せの絶頂にあったダイアナ妃だったが、チャールズ皇太子の不倫や彼女自身のスキャンダルなどが重なり、別居を経て1996年に離婚が成立する。そして1997年8月、ダイアナはフランスで交通事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。

あれから25年も経つのか…。本作を含め、ダイアナ妃に関するアーカイブ映像や写真資料はあまりに多いため、見ようと(会おうと)思えば私たちはいつでもその姿に触れることができる。イキイキと公務に励む姿、堂々としたスピーチ、息子たちを抱きしめる母性像、そして長身痩躯のスタイルに溜め息をつき、着こなしたゴージャスなファッションの数々に見惚れるのだ。未だに生き続け、鼓動を聞いているような感覚を持つほど、ダイアナ妃は身近に存在している。鬼籍に入った人だということを忘れてしまう。

エリザベス女王の国葬が執り行われ、チャールズが国王に就いた、このタイミングで本作を観ると、ある種の感慨を抱く。もし、生きていたら…離婚した元妃は参列しただろうか。ダイアナ妃とは様々な相剋のあったエリザベス女王。カミラを王妃と認める旨を申し渡した。国王の妻は明らかにカミラだ。だが、ダイアナ妃が生前に明言していた「人々の心のプリンセスでありたい」という言葉は、私たちの耳に残っている。そう、私たち庶民にとって“プリンセス”といえば、ダイアナ妃しかいないのだ。

本作は、とにかくダイアナ妃の映像、音声、画像を集めるだけ集めたドキュメンタリーである。それも“A to Z”的に整理されたり、章立てしたものではない。お妃候補として初めてメディアに登場してから亡くなるまで、公になった殆どの映像が網羅されていると言ってもいいかもしれない。
保育士だった20歳の頃の初々しい姿。カメラ慣れしておらず、上目遣いに見つめ、頰を赤らめる表情に、メディアは早速「恥ずかしがり屋さん」と渾名をつける。メディアに対しても脇が甘く、うっかり口を滑らしてしまう“お嬢さま”だ。
正式に結婚するまでメディアに肉声を録らせず、毅然と弁えていたキャサリン妃とは大違いである。そんな甘さや若さも含め、ダイアナ妃には人を惹き付ける魅力があった。当時、ダイアナ妃のヘアスタイルがブームになり、真似する女子が多かった。キャサリン妃にはそうしたムーブメントは起きていない。

本作を観ながら振り返り、あらためてダイアナ妃はこんなに多くのカメラの放列に晒されていたのかと驚く。私たちがふだん目にするのはニュース映像の被写体である。逆にダイアナ妃目線の映像を見ると、カメラを持ったパパラッチたちが巨大な山のよう!それが押し寄せてくる恐怖を味わう。休暇中も四六時中、続くのだ。視点を変えると世界観が変わるものだと痛感した。

本作には、ナレーションも説明字幕も関係者のコメンタリーも一切ない。映像に次ぐ映像で綴られたドキュメンタリーだ。それだけにバイアスの入りようはなく、監督の意図は編集に表れる。前述した通り、章立てはなく映像の羅列であり、印象操作や誘導はない。観客に委ねた形なのだ。潔い編集である。タブロイド紙のあざとさは一面トップ記事の矢継ぎ早な編集で表現される。持ち上げたり、下ろしたり…。メディアはいい加減なものだ。
逆に、ダイアナ妃が知己のカメラマンにヒントを与えて「撮らせた」様子も報じる。賛美も批判もせず、事実を伝えるのが監督の意図なのだろう。

ダイアナ妃と愛人、チャールズとカミラの盗聴音声は、スキャンダル映画を地で行くようだ。「子どもに聞かせたくない」という市民の率直な言葉が響く。当事者が相次いで出版した暴露本。テレビインタビュー番組。当時は日本のワイドショーでも盛んに報じられていたものだ。

ダイアナ狂想曲ともいえるメディアの暴力性に辟易しながら1歩退いてみる。現在のカミラやキャサリン妃の公務の在り方と比較すると(私見です)、ダイアナ妃は「前に出るタイプ」だったようだ。幼い頃の写真のポージングなどから見ても、“映る側”を意識していた人だったのかもしれない。お笑い芸人と一緒にしては申し訳ないが、「目立ちたい、前に出たい」というのは小児的欲求である。良い意味で、幼児性を隠さず、感情が表に出やすい性格だからこそ、人々に親近感を持たれたのではないか。

一方、チャールズは帝王学を叩き込まれ、常に沈着冷静、大人であることが求められた。未来の国王の矜持として、自分より前に出るダイアナよりも、立ててくれるカミラを選んだことは自明なのかもしれない。

テレビや新聞、ネットニュースに目を転じれば、国葬に参列するチャールズ国王、ウィリアム皇太子、次世代の王室を担うジョージ王子、シャーロット王女の姿。そして人生は続く…。そして人生は続くのだ。
(大瀧幸恵)


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2022年/イギリス/109分/英語/カラー/ビスタ/5.1ch/
配給:STAR CHANNEL MOVIES 
後援:ブリティッシュ・カウンシル 読売新聞社
©2022 DFD FILMS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://diana-movie.com/#modal
Twitter:@Dianafilm0930 #プリンセスダイアナ
★2022年9月30日(金)より、全国順次公開


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