ソングバード (原題:SONGBIRD)

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監督・脚本:アダム・メイソン 
共同脚本:サイモン・ボーイズ
製作:マイケル・ベイ マルセイ・A・ブラウン ジェイソン・クラーク ジャネット・ヴォルトゥルノ アダム・グッドマン アンドリュー・シュガーマン エベン・デヴィッドソン 
出演:KJ・アパ ソフィア・カーソン クレイグ・ロビンソン ブラッドリー・ウィットフォード ピーター・ストーメア アレクサンドラ・ダダリオ ポール・ウォルター・ハウザー デミ・ムーア

ウイルスに免疫がある運び屋ニコは、ロックダウン下で恋におち、ドアやスマートフォン越しに愛を通わせる恋人サラと、いつか顔を合わせて触れ合うことを夢見ていた。しかし、ウイルスの脅威がさらに増し続けるうち、サラの感染が疑われはじめ、彼女は「Qゾーン」と呼ばれる施設に徹底隔離されそうになる。組織の陰謀が渦巻く中で、ニコはサラを救う唯一の方法を求めて、荒廃したロサンゼルスの街を必死に駆け抜けるのだが―。

時は2024年の近未来、舞台はロサンゼルス。新型コロナウイルスは、より致死率が高く変異している、という極めて現実感を伴ったSFである。撮影されたのは、ロサンゼルスがロックダウンされ、ゴーストタウン状態だった2020年7月。外出制限の真っ只中で、よくぞ撮り上げたものだと感心する。そして全米公開は12月。如何に突貫作業だったかが分かる。
危険を顧みず参加したスタッフ、キャスト陣は時代の息吹を伝えようと必死だったに違いない。強引とも思える製作は、“21世紀のハリウッドバビロン”たる大物プロデューサー、マイケル・ベイ(『クワイエット・プレイス』『アルマゲドン』『トランスフォーマー』シリーズなど)だからこそ成し得た達成だ。

タイトルの「鳴き鳥」は希望の歌を歌う、との設定主訴は、いささか楽観主義のようにも思えるが、そこが米国ハリウッド発エンターテイメントの良さだろう。2020年時点では、ワクチンの接種も進んでいず、あと何年パンデミックが続くのか、見通しのつかない状態だった。楽観的な映画を製作し、人々を安堵の方向へ向かせたい、それがエンターテイメントの役割だ、という気概をマイケル・ベイほどの人であれば抱いていたに違いない。

侵入したら厳罰、家から出ると射殺、といった物々しい看板が大写しになる冒頭場面、人っ子一人居ない道路を検問所を通る配達員、其処此処に光る監視カメラ。不穏な空気の醸成は一瞬で伝わり、分かりやすい映画を作ろうとした意図が観える。一度も触れずしてスマホやインターホン越しに愛を語る配達員と祖母を介護する美女の“パンデミック版ロミオとジュリエット”が核になっている。ドアを挟んで2人が語り合う2画面を分割した映像は新鮮だ。本作は撮影時に関わる人数を減らすため、最低限のスタッフしか現場に配さなかった。複数のカメラで撮影するハリウッド流と異なり、カメラは1台。iPhone、GoPro、監視用カメラ、ドローンといった遠隔操作できるカメラをビデオソースとして用いており、苦肉の策が面白い映像効果を齎した。

マイケル・ベイが声がけしただけあり、監督・脚本は英国出身の中堅、撮影監督、音響、照明、編集、プロダクションデザインとも選りすぐりの一流である。カーチェイスシーン、バイオレンス、アクションもお手のものといった安心感がある。そうでなければ、短期の突貫作業は困難を極めたに違いない。登場人物たちの造形が弱かったり、既視感がある点、外出できる“免疫パス”の科学的根拠の薄さにも目を瞑ろう。

脇役陣は、全米俳優組合が厳しい基準を示す中、渋い名優が顔を揃えた。レコード会社の重役で富裕層を象徴する男には、『ゲット・アウト』の白人父親役が印象深いベテラン、ブラッドリー・ウィットフォード。その妻には、まだまだお元気!デミ・ムーア姐さん。最近はプロデュース業に熱意があるようだが、女優として現役である。

衛生局員役は一度見たら忘れないご面相のピーター・ストーメア(『マイノリティ・リポート』『コンスタンティン』(05)『ジョン・ウィック チャプター2』など)。個性の強い名脇役だが、スウェーデン出身でデビュー作は『ファニーとアレクサンデル』。ベルイマンのシェイクスピア舞台に多く出演しているせいか、東京グローブ座の舞台監督をしていたこともある。日本に縁深い俳優だ。

退役軍人で車椅子生活。推しの歌手にネットから投げ銭する男には、クリント・イーストウッド監督作『リチャード・ジュエル』に主演したポール・ウォルター・ハウザー。『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』や、スパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』でも印象的な役柄を演じるなど、活躍が目立つ俳優だ。

荒っぽい部分があるのは否めないが、今この時期に製作・公開しなくては意味がなかった映画。低いアングルを駆使した疾走感ある演出に見応えがある。
(大瀧幸恵)


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2020年/アメリカ/英語・スペイン語/5.1ch/シネスコ/84分/
提供:WOWOW 
配給:ポニーキャニオン 
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公式サイト:https://songbird-movie.jp
★2022年10月7日(金)より、 TOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開★


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