〈ROMAN PORNO NOW〉百合の雨音

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監督:金子修介 
脚本:高橋美幸 
プロデューサー:ニック・ウエムラ
撮影:上野彰吾
インティマシーコーディネーター:西山ももこ
音楽:中村由利子(楽曲 まほろば(中村由利子、山田路子、愛川聡)アルバム「この星のぬくもり」より(ThreeknowmanRECORDS))
出演:小宮一葉 花澄 百合沙 行平あい佳 大宮二郎 / 宮崎吐夢 星野花菜里 宝保里実 細井じゅん

過去のトラウマから恋愛に臆病になっている葉月は、憧れの上司・栞に秘かに想いを寄せてい
る。一方、凛とした佇まいの栞もまた、夫との関係に思い悩んでいた。ある大雨の晩、お互いの心の隙間を
埋めるかのように身体を寄せ合い一線を越えてしまうふたりだが・・・。

〈百合もの〉といえば、前回の「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」中田秀夫監督がロマンポルノに初挑戦した『ホワイトリリー』が記憶に新しい。残念ながら、内容・演出話法共に古さが漂う出来であった。が、ヒロインの2人は美しく、純愛ドラマに相応しい配役だった。先日ご紹介した〈ROMAN PORNO NOW〉第2弾の『愛してる!』でも、昭和の頃から、日活ロマンポルノはキャスティングが鍵を握っている、と書いた。その意味に於いて、『ホワイトリリー』は伝統を踏襲していたと言えるだろう。

さて、令和の〈ROMAN PORNO NOW〉企画第3弾は、34年ぶりにロマンポルノ原点回帰した金子修介監督作である。しかも、金子監督デビュー2作目の『OL百合族19歳』(84)と同じ〈百合もの〉。真打ち登場か?と思いきや、キャスティングには首を傾げてしまった。〈ROMAN PORNO NOW〉は、女性観客を当て込んだ企画と聞く。女子は同性の行動様式や容姿に厳しい目を持つ。

上司に憧れる編集者を演じた小宮一葉、同僚役の百合沙とも、若々しく当世風の空気を醸し出して、脱ぎっぷりも潔い。だが、肝心の上司役に扮する花澄の顔があまりにも直し過ぎ(?)で不自然なのだ。一度気になり出すと、その容姿だけではなく、演技や周りの空気セットまで加工的に思えてしまう。セレブで上品な知的美女という設定のヒロインが、そのように見えないのは致命的である。
「お嬢ボス」と台詞が出る度、違和感を覚えてしまった。

金子監督らしく、映像美と邦楽を活かしたスタイリッシュな世界観には観るべきものがある。雨、雫、シャワー、川の流れといった水のモチーフが、モノトーンの回想シーンと重なる場面は美しい。邦画に付きもののタイアップ的な楽曲を用いず、邦楽を場面に合わせた変調で格調高く表現した劇伴は新鮮であった。

〈百合もの〉で忘れてならないのは、短く切った爪。ヒロインの深爪クセが、過去のトラウマを象徴している。繊細に刻まれた人物造形は監督らしい。独自の世界観を構築する力量ある監督だからこそ、キャスティングに”女子目線”の足りなかった点が惜しまれる。
(大瀧幸恵)


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2022/日本/スコープ・サイズ/5.1ch/84分/R18+
制作プロダクション THE DIRECTORS ALLIANCE
企画製作・配給 日活 
©2022日活
公式サイト:https://www.nikkatsu-romanporno.com/rpnow/
★2022年10 月 14 日(金)より、順次公開


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