シャイニー・シュリンプス!世界に羽ばたけ (原題:La Revanche des Crevettes Pailletées)

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監督・脚本 :セドリック・ル・ギャロ、マキシム・ゴヴァール
エンディング曲:ビッケブランカ「Changes」(avex trax)
出演:ニコラ・コブ、ミカエル・アビブル、デイヴィット・バイオット、ロマン・ランクリー、ローランド・メノウ、ジェフリー・クエット、ロマン・ブロー、フェリックス・マルティネス、ビラル・エル・アトレビー、ピエール・サミュエル、ブリアナ・ギガンテほか

クロアチアで開催された LGBTQ+のスポーツの祭典ゲイゲームズに参加し、最高のゲームを繰り広げたゲイの水球チーム《シャイニー・シュリンプス》。病気を隠していたリーダーを亡くしてから 2 年が経ち、メンバーたちは追悼の意を込めて東京で開催されるゲイゲームズを目指すーー!

前作の「シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』から2年後が舞台。フランスに実在するゲイの水球チーム 「シャイニー・ シュリンプス」がモデルだ。楽しく笑えてテンポ良い展開に、練られた脚本、俳優陣の完璧な演技は健在である。加えて、今回はLGBTQ+にとって世界最大の祭典「ゲイゲームズ」の開催地・東京を目指す!
「ニッポンよぉ〜!」「トーキョウ行くのよぉ〜!」
とハイテンションにはしゃぐ濃いキャラのメンバーたちを見ているだけで、こちらも楽しくなる♪フランスでは日本アニメや漫画が大人気なことは周知の事実。有名なコスプレイヤーもおり、フランス人の日本文化に対する理解と親和性が、本作の特徴的な魅力だ。日本で映画を撮ることを夢見ていたマキシム・ゴヴァール、セドリック・ル・ギャロ両監督の日本愛が伝わってくる。

エンディングにご注目を。大いに笑った後で日本語の歌が流れる締めくくりは、驚きと共に爽やかな後味を残してくれる。日本のシンガーソングライター、ビッケブランカの起用は、エンディングを重視する両監督の希望だったそう。提案や改良にも快く応じたビッケブランカとの協業は成功といえる。フランスと日本文化との親和力は高いようだ。

前作に続き、チームメンバーによるパフォーマンスは本作の見どころである。冒頭からいきなり登場する日本語に続き、水を弾く踊りはキレッキレのかっこよさ!ポールダンスはセクシーなだけに留まらず、芸術性を醸し出す。
ブリトニー・スピアーズの 楽曲に合わせたセーラームーン・コスプレは、インパクトある上に、お洒落感も伴う。象徴的に使われるデヴィッド・ボウイの 「Heroes」。世界中のLGBTQ+の人々に向けた応援歌のように聴こえてくる。両監督の音楽的センス、パフォーマンス演出力には舌を巻くばかりだ。

可笑しい、楽しい、と笑わせてくれながら、根底にはしっかり差別に対する批判精神と、LGBTQ+の人々を平等に扱おう、という強いメッセージが込められている。日本から見ると、民主主義国家・人権先進国と認識していたヨーロッパでも、これほどの差別が横行していることは、前作同様に衝撃だった。ゲイダー(ゲイかどうか判断するレーダー)などという語彙を初めて聞いた。また、日本人なら控えてしまうような口汚い言葉でゲイたちを平然と罵る場面も。(台詞の紹介自粛)

ハイライトは、日本へ飛び立った飛行機が、まさかの“国家ぐるみでLGBTQ+を弾圧する“某国で降りることになってからの恐怖と興奮に満ちた大冒険!全編、雪のウクライナで撮影されたという、このシークエンスこそ、監督たちが伝えたいメッセージだろう。水責め拷問、洗脳ビデオ、教会での説法などなど、あからさまな人権侵害どころか、魂の死さえ招くような場面は笑えないほど深刻なリアルさを表出し、背筋が寒くなる。

驚きは、マッチングアプリにゲイを装って登録し、“ゲイ狩り”をする男たちの存在だ。中世の魔女狩りでもあるまいし…。ゲイは夜行性だから、と闇で待ち伏せ、大勢で叩きのめすマッチョな男たち。人間の悪意と憎悪は深く潜在化する証左だ。悪魔と天使の二項対立を、監督は望んだわけではないだろう。が、現実はもっと厳しいからこそ、こうした逸話が挟まれたのではないか。想像するだに胸が痛む。キリスト教精神が根付いているため、仏教国よりも過激な偏見・差別を持った一定層がいるのかもしれない。人々の内心には立ち入り難いこと、変えられない点を、本喜劇から学んだ気がする。

その中でも、
「ジェームズ・ボンドはゲイだったのよぉ〜!」
などと、のたまう濃いキャラメンバーたちのユーモアが救いだ。本作を観れば、きっと意識が変容するに違いない。娯楽性と社会性が見事に均衡した快作。多様性が当たり前の世の中になることを切に願おう。
(大瀧幸恵)


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2022 年/フランス・日本/カラー/シネマスコープ/フランス語・ロシア語・日本語/113 分
提供・配給:フラッグ
宣伝:スキップ
© 2022 LES IMPRODUCTIBLES - KALY PRODUCTIONS - FLAG - MIRAI PICTURES - LE GALLO FILMS
公式サイト:https://flag-pictures.co.jp/shinyshrimps-movie
公式 Twitter:https://twitter.com/shinyshrimps_jp
★2022年10月28日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国にて公開


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