群衆 セルゲイ・ロズニツァ監督3選

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セルゲイ・ロズニツァ監督ドキュメンタリー作3選が、とうとう日本で初上映される!カンヌ映画祭で2冠を獲り、近作10作品全て世界三大映画祭に選出されているのに、何故か今まで日本未公開だったウクライナの巨匠だ。予備知識なく初めてロズニツァ監督の作品に触れた時の感触を何と表現したらよいのか…。ニュース映像や記録映像を用い、説明は一切なく劇伴もナレーションもない。まさに観る者の感性に一任される”アーカイヴァル映画”なのだ。説明の不在を凌駕した剥き出しの説得力。提示される事実に向き合って貴方は何を感じるか。(大瀧幸恵)

『国葬』( 原題:State Funeral )
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1953年3月5日、ウラジーミル・レーニンの死後長くソビエト連邦最高指導者の地位にあったヨシフ・スターリンの死が報じられた。国葬の模様は何百人ものカメラマンによって撮影され、映画『偉大なる別れ』として公開されるはずだったが、未公開のままお蔵入りになる。そのフィルムにはモスクワに安置されたスターリンの姿や、「国父」の死を悼む人々が収められていた。

スターリンの死がソ連全土に報じられた日の記録。ロズニツァ監督は、偶然発見された記録映像を1本の途轍もなく見応えのある映画に仕立て上げた。ここではスターリンの所業については何ら触れない。否定も肯定も為されない。ひたすら本物の「儀式」が鮮烈な世界像として浮き上がる。鳴り響く鐘の音、棺を運ぶ男たち、日にち毎に症状の変化を詳しく伝える新聞を読む人、祈りを捧げる人々の中には、様々な少数民族、日本人のような顔をした蒙古系の人々。場所は港町、工場、ウクライナ、キーロフ、モスクワと移り変わり、「その日」の全土の表情を映し出す。ロシア聖教の司祭たち。それにしても遺骸をスケッチする人々がこれ程いたとは!
無添加無加工フィルムの重さ、厚さを思い知らされた。(大瀧幸恵)


2019年製作/135分/オランダ・リトアニア合作
(C)ATOMS & VOID


『粛清裁判』( 原題:The Trial )
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1930年、モスクワで8名の学者が、西側諸国と共謀してクーデターを計画したとして裁判にかけられる。ヨシフ・スターリンが見せしめのために行ったこの「産業党裁判」により、無実であるにもかかわらず、被告人たちは有罪判決を言い渡される。90年前のソ連で撮影された。

スターリンによる”見せしめ裁判”の全記録。個人的には3作のうちで最も打ちのめされた映画だ。1930年モスクワ最高裁判所。小走りに入場する人々、傍聴席は2階まで満席である。8人の有識者が西側諸国と結託し、クーデターを企てたという有りもしない罪状を捏造された事件。裁判の様子はソ連初期のトーキー映画『13日(「産業党」事件)』から。
とにかく観て欲しい!独裁政権が如何にして人を欺き、群衆を扇動したか、つぶさに分かる機会は滅多にない。だだっ広く冷たい法廷では、被告人は豆粒のように小さい。一部の被告人は弁明も弁護人を拒否する。「拘置所で考えた。自己弁護に意味ない」と…。被告側に技師が多いのは、経済や政治知識の訓練がされていないからだと分かった時の衝撃!大学教授ら学識者はマルクスについて熟知しているから反駁が可能なのだ。
時折り挟まれる民衆デモの風景が異様な熱気を孕む。「反革命分子に死を!」
被告人たちは皆、自由を剥奪され、全財産没収、全ての公民権も剥奪され、銃殺刑に至った。控訴の権利は与えられなかった。そもそも産業党などという党は存在せず、スターリンの指示で捏造していたのだ。ラストには検事総長や法務大臣など裁判に関わった人物たちの最期も明かされる。必見!(大瀧幸恵)


2018年製作/123分/オランダ・ロシア合作
(C)ATOMS & VOID


『アウステルリッツ』( 原題:Austerlitz)
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第2次世界大戦中、ベルリン郊外にある強制収容所には、多くのユダヤ人たちが収容されていた。虐殺や飢え、病気や強制労働などによって命を落とした人々が、焼却炉で燃やされ灰になった場所であり、人類の負の遺産として残されている元強制収容所はいま、ダークツーリズムのスポットとして、多くの観光客が気軽に訪れる場所になっていた。

ロズニツァ3作の中で最初に観た作品。行き交う多くの人々、人種・聞こえてくる言語とも様々だ。画面はひたすらフィクスに固まったまま。メインゲート入口に掲げられた 「働けば自由になる」の看板を見て、やっと場所が理解できた。ここでもロズニツァは何ら説明もなく、ナレーション、劇伴は入れず、”ないない尽くし”の作風を貫く。
ベルリン郊外にあるザクセンハウゼン強制収容所跡地を「ダークツーリズム 」として訪れる人々。カメラの焦点は建造物にあり、人々を追わず見切れて行く。それによって彼の地で行われた行為が際立つ仕掛けだ。モノクロ画面から、建物内部に囚われたように映る観光客たち。ロズニツァの意図が明白な一本である。(大瀧幸恵)


2016年製作/94分/ドイツ
(C) Imperativ Film

3作とも
監督:セルゲイ・ロズニツァ
配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/sergeiloznitsa
★11月14日(土)~12月11日(金)、シアター・イメージフォーラムにて3作一挙公開

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