聖なる犯罪者 (原題: Boże Ciało、 英題: Corpus Christi)


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監督:ヤン・コマサ
出演:バルトシュ・ビィエレニア、エリーザ・リチェムブル、アレクサンドラ・コニェチュナ、トマシュ・ジィェンテク

少年院に服役中のダニエルは、前科者は聖職に就けぬと知りながらも神父になることを夢見ている。仮釈放となり田舎の製材所で職を得たダニエルは、ふと立寄った教会で新任の司祭と勘違いされ、司祭の代わりを命じられる。司祭らしからぬダニエルに村人たちは戸惑うが、徐々に人々の信頼を得ていく。数年前、この村で起こった凄惨な事故を知ったダニエルは、心に深い傷を負った村人たちを癒そうと模索する。そんな中、少年院にいた男が現れ、すべてを暴くとダニエルを脅し、事態は思わぬ方向へと転がりだす…。

とてつもない技量を持つ監督と、神がかった魂すら造形する若手俳優を前に目を逸らすことすら許されない115分だ。前年の『COLD WAR あの歌、2つの心』に続き、ポーランド映画が昨年のオスカー外国映画賞にノミネートされたのは喜ばしい。結果は『パラサイト〜』に譲ったものの、衝撃度且つクオリティの高さは負けていない。
無神論者なのに、宗教には人一倍強い関心を持つ者として、本作の至る所、画面の奥に潜む隅々まで興味は尽きなかった。聖と俗、信と疑、虚飾と真理、罪と赦し、静と動、欲と謙虚、恐怖と安堵、愛と憎悪、熱情と怜悧、病と健全、生と死…。思いつくまま列挙したこれらの二項対立が本作の主題と見せながら、実はこのように単純に整理できない、捉えどころがない人物を主役に据えている。矛盾した複雑さを孕む物語は、2度3度と見返す度に新たな発見を与えてくれる深度に達しているのだ。

決して難解な映画ではない。最後までスリルに満ちた緊張感と、不穏な空気に支配されたニュアンスを楽しむ映画でもある。敬虔なカソリック信者が大半であるポーランドの実相、司祭の判断が地域の政治や経済にまで及ぼす影響といった描写は興味深い。

最初から最後まで主人公の視点で構成されることから、先ずはキャスティングが重要だ。ヤン・コマサ監督はこれ以上望めない程の敵役を得た。28歳のバルトシュ・ビィエレニアは奇跡の如き名演で監督の期待に応えた。落ち窪んだ眼窩、薄緑色の瞳は時に憎悪を燃やしたかと思えば、神の視座で信者を看取る。熱情を込めた説法でロックスターの恍惚を表し、クラブではアシッドをキメて瞳孔は開きっ放し!獣のようにしなやかな身のこなしは少年を思わせるイノセントさ、女性的な穏やかさと狡猾な光を放つ。敢然とキリスト像を見上げる強い決意の眼差し…。ビィエレニアの瞳の演技だけで本作の意図が伝わる程だ。
ラストの解釈は観客に委ねられている。実話ベースの傑作をお見逃しなく!(大瀧幸恵)


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2019 年/ポーランド=フランス合作/ポーランド語/115 分/R18/5.1ch デジタル/スコープサイズ
後援:ポーランド広報文化センター
配給:ハーク
© 2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.- WFSWalter Film Studio Sp.z o.o.- Wojewódzki Dom Kultury W Rzeszowie - ITI Neovision S.A.- Les Contes Modernes
公式サイト:http://hark3.com/seinaru-hanzaisha
★2021 年 1 月 15 日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

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