どん底作家の人生に幸あれ! (原題:The Personal History of David Copperfield)

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監督:アーマンド・イアヌッチ『スターリンの葬送狂騒曲』
原作:「デイヴィッド・コパフィールド」チャールズ・ディケンズ著(新潮文庫刊、岩波文庫刊)
出演:デヴ・パテル『LION/ライオン ~25 年目のただいま~』/ピーター・キャパルディ『パディ
ントン』ヒュー・ローリー『トゥモローランド』/ティルダ・スウィントン『サスペリア』
ベン・ウィショー『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

優しい母と家政婦と共に幸せに暮らしていたデイヴィッドは、母の再婚相手によって都会の工場に売り飛ばされてしまう。過酷な労働に明け暮れる中、最愛の母が亡くなり独りぼっちになったデイヴィッド(デヴ・パテル)は、やがて唯一の肉親である変わり者の伯母(ティルダ・スウィントン)に引き取られる。伯母の助けで進学した上流階級の名門校を卒業後、恋に落ち、法律事務所に職を得てようやく幸せをつかみかけた矢先、事態が暗転する。

2020年は英国作家チャールズ・ディケンズの没後150年だったそうだ。これまでに6回も映画化・TVドラマ化されているディケンズの半自伝的小説「デイビッド・コパフィールド」を皮肉屋、独創家、ブラックユーモア派のアーマンド・イアヌッチ監督が描くと…、もうカオス状態の面白さ!これだけ自由に翻案されたら、流石のディケンズもぼう然とするに違いない。
何しろ、肌の色は多様性を通り越して混沌?「えっ?どうしてあの親からこの子が?」などと引っ掛かっていたら、話にどんどん追い越されてしまう。観客はイアヌッチ監督が構築した世界を全部受け入れ、付いていくしかないのだ。忙しい忙しい!

ジェットコースターのようにハイ・アンド・ロウを繰り返すデイヴィッド(劇中では殆ど別の名で呼ばれ、まともに”デイヴィッド”になることはない)の人生。翻案といっても、現代風にカリカチュアライズされた描き方ではなく、至極、真面目に1850年代 のヴィクトリア朝が活写される。デイヴィッドが生まれた家のロケ地ノースフォークは、あくまで温かく、陽光が射す緑豊かな庭園と落ち着いた佇まいの屋敷である。

少年から青年へと過酷な成長期を過ごす瓶詰め工場は、東ロンドン。コテコテの工場地帯の匂いや空気まで漂って来る。
サフォーク州ベリー・セント・エドマンズには、今でも在る大きな馬車宿で撮影された。船を逆さにした家が建ち、デイヴィッドに大きな精神的影響を与えるドーヴァーの浜辺では、見たこともない美術造形が構築され、これも見どころだ。
何れの場所も、登場人物たちの衣装や家具調度品の質感が優れており、目を奪う。人口なのか自然光なのか判別のつかないライティングが施された映像も美しい。細部の入念なディテール描写が、単なる”おふざけ”映画ではないクオリティを示しているところが、イアヌッチ監督らしい拘りだ。

主演級の俳優を集結させただけあって、演者陣の人物造形ぶりは個性という陳腐な言葉では表す術がないほど。”世界一俳優の層が厚い国”英国だけに、濃厚演技を贅沢に味わうことができる。英国好きには楽しめる要素が満載だろう。(大瀧幸恵)


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2019 年/イギリス・アメリカ/シネスコ/5.1ch デジタル/120 分/
配給:ギャガ
公式サイト:gaga.ne.jp/donzokosakka
(c)2019 Dickensian Pictures, LLC and Channel Four Television Corporation
★2021 年 1 月 22 日(金)より、TOHO シネマズ シャンテ、シネマカリテ 他にて全国順次公開

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