ローズメイカー 奇跡のバラ (原題:La fine fleur)

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監督・脚本:ピエール・ピノー
脚本:ファデット・ドゥルアール、フィリップ・ル・ゲ
出演:カトリーヌ・フロ(エヴ)、メラン・オメルタ(フレッド)、ファッシャ・ブヤメッド(サミール)、オリヴィア・コート(ヴェラ)、マリー・プショー(ナデージュ)、ヴァンサン・ドゥディエンヌ(ラマルゼル)

フランスの郊外で、父が遺(のこ)した小さなバラ園を切り盛りするエヴ(カトリーヌ・フロ)。優秀なバラ育種家として活躍していた彼女だったが、バラ園は倒産寸前で人を雇う余裕もない。やむを得ず職業訓練所から3人のスタッフを派遣してもらうが、バラの知識など皆無の彼らは足手まといになるだけ。そんな中でエヴは新種のバラの交配を考案し、翌年に開催されるバガテル新品種国際バラ・コンクールに挑もうとする。

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鳥たちの囀り、「ブルーレディー」の優しくメローな曲が流れ、薔薇が薫る花束が画面いっぱいに広がる。カメラはロココ調の青い門構えの豪邸へ。どこまでも続く薔薇の庭園。画面から甘やかな香りが伝わってくるようなオープニング。すっかりロマンチックな気分に浸っていると、
「予算がないのよ!」と早口で喋くり合う女2人の世知辛い会話。
世界最高峰パリ・バガテル公園の新品種コンクールグランプリを目指すベテラン頑固者育種家エヴと、”癖がスゴい”仲間たちとの1年を追ったドラマである。
大いに笑わせ、感心し、涙と感動に包まれる…。冒頭からエンディングまで薔薇、薔薇、薔薇、薔薇!様々な品種の薔薇が楽しめ、薔薇に纏わる歌、馨しい香りに満たされた映画はヒーリング効果満点。観終わった途端「もう一度観たい!」と思わせる名作の誕生である。

真っ青な空に映える緑の丘、長閑な田園地帯を走る赤いシトロエン。世界屈指のローズブランド、ドリュ社のバラ園で撮影したという本作は、ドラマ部分の撮影こそ2ヶ月間だが、無人カメラを設置して10か月を定点撮影。ハイスピードで移り変わる季節の薔薇農園は溜息が出るほど美しい。

これが長編2作目となるピエール・ピノー監督は、本作を母親に捧げている。育種家は最高の薔薇を生み出すのに必要な”両親”を選び出さなくてはならない。血統図まで把握し、遺伝可能性を審査し、両親の花の時期を合わせる栽培、種から芽生えた異なる個性の苗を均等に育てる。時間と手間暇をかけ、薔薇たちを病気や害虫から守る知識も必要だ。が、自然が相手なだけに、自己努力だけではどうにもならない非合理性を纏っている。困難に見舞われるほど、実った時の喜びは何より代え難い。
まるで子育てのようだ!本作を観ながら実感した。ピノー監督は育種家を親になぞらえ、移民二世で育児放棄された前科者フレッドの逸話を横軸に編みながら、愛情や幸せの記憶が、人間と薔薇にとって如何に大切かを問うている。

監督は、接ぎ木をせず挿し木だけ。薬剤で成長を早め、薔薇を工業製品のように売りまくる大企業への風刺も忘れない。 接ぎ木をして、T字の切込みに差し込む丁寧な台木栽培を行うエヴのような手作り農園との対比が鮮やかだ。
香りと記憶は寄り添っていると言われる。薔薇の香りを嗅ぐと幸せな記憶が蘇るように、多幸感に包まれる映画に違いない。
(大瀧幸恵)


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2020年製作/96分/G/フランス
配給:松竹
THE ROSE MAKER © 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/rosemaker/
★2021年5月28日(金)より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開

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