ブラックバード 家族が家族であるうちに (原題:BLACKBIRD)

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監督:ロジャー・ミッシェル
脚本:クリスチャン・トープ
出演:スーザン・サランドン(リリー)、ケイト・ウィンスレット(ジェニファー)、ミア・ワシコウスカ(アンナ)、サム・ニール(ポール)、レイン・ウィルソン(マイケル)、ベックス・テイラー=クラウス(クリス)、リンゼイ・ダンカン(リズ)、アンソン・ブーン(ジョナサン)

ある週末、リリー(スーザン・サランドン)と夫のポール(サム・ニール)が生活している海辺の屋敷に、家族と親しい友人が集まる。ある理由からすでに死を覚悟したリリーは、最後の週末を大切な人々と過ごそうと心に決めていたのだった。そして、彼女の屋敷に長女のジェニファー(ケイト・ウィンスレット)とその家族、次女のアンナ(ミア・ワシコウスカ)とパートナー、そしてリリーの親友リズ(リンゼイ・ダンカン)らがやって来る。

『ノッティン グヒルの恋人』 などの愛とユーモアに富んだ作品のイメージが強いロ ジャー・ミッチェル監督が、本作のような重い題材と真っ向から対峙したことは驚きであった。驚きは続く。キリスト教徒の多い欧米に於いて、尊厳死を主題に選んだ点。オリジナル作品はデンマーク映画(日本未公開)である。その脚本家クリスチャン・トープが、やはり信者の多い米国用に脚色したリメイク作品だ。

ミッチェル監督は英国外交官を父に持ち、幼少期を欧・中東などで過ごし、ケンブリッジ大学に演劇を学んだ“英国ルーツ派”。ケイト・ウィンスレットとその息子役、ベテラン女優のリンゼイ・ダンカンも英国人だ。登場人物がほぼ6人の米国家庭劇で半数が英国人という意外さ。流石に“世界一俳優の層が厚い国”英国の面目躍如である。
さらに、設定は米国コネチカットにも関わらず、撮影は英国チチェスターで行われた。雄大にして静寂を湛える海岸線に接した瀟洒な住宅。本作では殆どが、この家の中で起きる出来事であり、家の存在は隠れた主役とも言える。

これらの意外性を頭に入れた上、モチーフとして家庭劇を眺めると、興趣は尽きない。味わい深さが信条だ。尊厳死に関して世界的な傾向を見ると、ベルギー、スイスなどプロテスタント信者の多い国が挙げられ、カソリックでは反対の姿勢を採っているようだ。
知る限り、米国で尊厳死が法的に認められているのは6つの州である。米国では州ごとに法律が異なり、スーザン・サランドン扮するリリーの決意はコネチカット州では許されない。そこで、医師でもある夫は一計を案じた。
”その日”に集まってきたのは家族の他、リリーの旧友リズも含まれていたことから、リリーの娘2人は或る可能性について憶測し始める。家族にとっての大ごとである。邪推したくなっても仕方ない。一堂に会し、各々が抱えるわだかまりが噴出する瞬間、愁嘆場が繰り広げられながら、絶妙なユーモアが寄せては返す波のように訪れる。この緩急のリズムが予定調和的なハリウッド映画とは一線を画す秀逸さだ。

深い愛情を確かめあった後、訪れる静謐さが余韻を齎す。生真面目な長女役のケイト・ウィンスレットが物語を牽引し、LGBTQの次女のパートナーを演じた、ノンバイナリーを公表するベックス・テ イラー=クラウスが、上質なドラマに得難いアクセントを加えている。
(大瀧幸恵)


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2019年製作/97分/PG12/アメリカ・イギリス合作
配給:プレシディオ、彩プロ
(C) 2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:https://blackbird.ayapro.ne.jp/
★2021年6月11日(金)より、TOHOシネマズシャンテほか全国公開

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