ココ・シャネル 時代と闘った女 (原題:Les Guerres de Coco Chanel)

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監督・脚本:ジャン・ロリターノ
出演:ココ・シャネル、フランソワーズ・サガン他
ナレーション:ランベール・ウィルソン

1883年にフランスの救貧院で誕生したココ・シャネルは、やがてパリに帽子店を開く。後にブティックも開業した彼女はジャージー素材やマリンルックなどをヒットさせ、さらに香水やアクセサリーなどの販売も始め、第2次世界大戦前には多数の従業員を雇い入れるまでになる。だが1939年、パリにナチスドイツ軍が侵攻してくると、突然従業員たちを解雇して店を閉める。

体感時間が55分とは思えないほど、濃密な内容と魅力に富んだドキュメンタリーだった。今年は、シャネル没後50 年、誰もが知る香水「シャネルの5番」が誕生して100 年に当たる。ファッションの世界では最も知られた名前イコール銘柄であるシャネル。シャネルの5番と共に世紀を生き抜いた人物の一生である。生ぬるい逸話はない。副題でもある「闘い」に満ちた人生だったことに圧倒され、次々と繰り出されるストーリーにメモを取る手が忙しかった。

面白いのは、シャネルが自伝著作を依頼した多くの伝記作家から、”断られていること“。その理由は「神話を語りたがる」「真実を聞き出すのは難しい」「 神話を押し付けるから、みんな逃げ出す」のだそうだ!
虚言を弄してでも、”なりたい自分“を残しておきたい。自意識と矜持が高い人物だったことが分かる。

1883 年、 仏南西部のオーヴェルニュで生まれたガブリエル。母は洗濯女、行商人の父は母が死亡後、5人の子を捨て蒸発。12歳の時に修道院付属孤児院で裁縫を学ぶ…というのは公式で、当時の国勢調査を調べた作家によると、実際には叔母宅へ家政婦として預けられたようだ。
若い女性は結婚に備え、針仕事をするのが風習。それが嫌でたまらなく、ハンカチや新婚用の夜着に他人のイニシャルを刺繍する仕事を嫌悪し、「生地に 唾を吐いた」と自身が語っている。用意された結婚も嫌って出奔!これは当時の反社会的といえる行動だそう。自立意思の強固さと個性の現出が見える逸話だ。これ以降は暫く痕跡が消える。

20歳の頃はムーランの仕立て屋にいた。 場末のミュージックホールで歌い踊り、 騎兵隊の人気を得る。一説には 売春を侵しても這い上がろうとする野心を持っていたという。
裕福な将校から招待され、その 愛人になり、社交界との接点が始まってからは怒涛の勢いで成功譚が切り開かれて行く。
ここまで読んで「観たい!」とお思いになった方は多いのではないだろうか。1970年87歳の時に年若いダンサーと腕を組み、自身を描いたブロードウェイミュージカルに向かう時の映像には、ある意味で感動を覚えた。87歳にして少しも曲がらぬ背筋。シャネルスーツを着こなした細い肩からは、「闘う女」の炎がメラメラと揺らめいて見えるようだ。
稀代の女性の一生を見逃す手はない。
(大瀧幸恵)


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2019 年/フランス/ 55 分/
© Slow Production-ARTE France
配給:オンリー・ハーツ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
公式サイト:http://cocochanel.movie.onlyhearts.co.jp/
★2021年7 月 23 日(金・祝)より Bunkamura ル・シネマ他にて全国順次公開

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