復讐者たち (原題:Nakam /英題:PLAN A)

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監督・脚本:ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ
出演:アウグスト・ディール(『名もなき生涯』『マルクス・エンゲルス』『イングロリアス・バスターズ』)、シルヴィア・フークス(『ブレードランナー2049』)

1945年、敗戦直後のドイツ。ナチスによるホロコーストを生き延びたものの、収容所で散り散りになった妻子をナチスに殺害されたユダヤ人男性のマックス(アウグスト・ディール)。絶望のどん底に突き落とされ、激しい復讐(ふくしゅう)心を抱くようになった彼は、ひそかにナチスの残党を私刑として殺害しているユダヤ旅団と行動を共にする。やがて、さらに過激なユダヤ人組織ナカムの一員となるが、そこで600万ものドイツ人を標的にした復讐計画プランAが動き出しているのを知る。

エンディングが終わっても、印象的な台詞が頭に鳴り響く。
「あなたの愛する家族が、何の罪もない家族が殺されたと想像してくれ。あなたはどうする?自問してほしい」
「プランA(英題)は練りに練った計画よ。裁判の正義まで待てない!ドイツ人は迫害されるユダヤ人を見ていた。目には目を。600万人には600万人よ」

ナチに裁きを、ドイツ人に復讐を…。ホロコーストを題材にした映画は数多あれど、このような実話復讐劇が存在していたとは知らなかった。第二次世界大戦後、ドイツ第三帝国は崩壊していた。そして、イスラエルは未だ建国前だった。つまり、戦争という、ある意味合法的な報復手段はなかったわけだ。

英国軍に管理された”武装したユダヤ人”パレスチナのユダヤ人による「ユダヤ旅団」がナチ高官への報復目的で欧諸国を徘徊していたことも初めて知った。本作の主軸となるのは、それとは別の組織ユダヤ人パルチザンによる「ナカム(原題)」という、より過激な集団である。主人公はアウシュビッツ収容所にいる間、妻子を殺された男だ。
日本では『青い棘』で初お目見えし、『ヒトラーの贋札』やテレンス・マリック監督作『名もなき生涯』で主演を務めた名優アウグスト・ディールが演じる。ディールの、瞳に悲しみと怒りを宿し、全身から絶望や悲壮感を発散させる表現が、この男の境遇と内心をあますところなく体現している

「奥さんは子どもを連れて森に逃げたけど、捕まって穴を掘らされ、銃で撃たれた。翌朝まで土が動いていたみたい。まだ息があったのね」
妻子の最期を伝えてくれた同胞のリアル過ぎる報告を聞き、森に駆け出し土に顔を埋めて慟哭する姿を真上から捉えたショットが忘れ難い。前半から胸を疲れる場面が続く。しかし、
「私たちの目的は、普通の「ホロコースト映画」から極力かけ離れたストーリーとして表現することだ。ハイボルテージなアクション満載のドラマという現代的な映画作りを、心を揺さぶる深い要素のある、この驚くべき史実と組み合わせて映画化することで、普通のミニシアター系映画から幅広い観客に届けることのできる、真に意義深く、楽しめる作品にできると考えている」
と、監督を務めたイスラエル出身のドロン・パズとヨアヴ・パズ兄弟が語るように、映画は通常のホロコーストものとは一線を画した転調を兆し始める。一筋縄の復讐劇ではないのだ。

生き残っても家族を失い、絶望のどん底にいたユダヤ人の一部は、復讐することに生命の炎を燃やすようになる。新たな生き甲斐を得て熱中するも、そうした手段に反対する者もいるのだ。パズ兄弟は今まで口をつぐんで来た多くの生存者に聞き取りしながら、慎重に企画を進めたという。ラストに映し出される高齢になった生存者の顔、顔、顔…。恩讐の彼方なのか、未だに怒りが滾っているのか?観る人、一人一人が感じ取ってほしいと思う。余韻の残る力作である。
(大瀧幸恵)


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2020年/ドイツ、イスラエル/英語/110分/シネスコ/5.1ch/
提供:ニューセレクト/
配給:アルバトロス・フィルム
© 2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cine plus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE 
公式サイト:https://fukushu0723.com
★2021年7月23日(金・祝)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネクイントほか全国公開

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