サイダーのように言葉が湧き上がる

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監督:イシグロキョウヘイ
脚本: イシグロキョウヘイ、佐藤大
原作:フライングドッグ
音楽:牛尾憲輔
声の出演:市川染五郎、杉咲花、潘めぐみ、花江夏樹、梅原裕一郎、中島愛、諸星すみれ、神谷浩史、坂本真綾、山寺宏一

ある夏の地方都市。チェリーはコミュニケーションが苦手な少年で、代わりに自分の思いを俳句にしていた。一方、矯正中の大きな前歯をマスクで隠すスマイルは、カワイイと思ったものを動画で配信し人気を得ていた。偶然知り合った二人は、バイト先に来たフジヤマという老人が思い出のレコードを探していることを知る。

夏色の雲、真っ青な空、緑拡がる田園、オレンジに染まる夕暮れ、山桜、お祭り、打ち上げ花火…。画面はこれでもか!というほどカラフルな夏色に埋め尽くされる。溢れ出る色の洪水はアニメの特権だ。おまけにシュワシュワと弾けるポップなサウンドデザイン♪監督のイシグロキョウヘイはバンド活動の経験もあり、”耳が良い”。音楽を担った牛尾憲輔と共に、70〜80年代風の透明感に満ちた劇伴、「never young beach」の主題歌、劇中歌(大貫妙子)の構成に鮮やかな彩りを加味させた。”目と耳に心地好い”映画だ。

1年以上も公開が遅れる運命を背負った本作。が、梅雨明けの夏最盛期に公開し、期せずしてヒロインのマスク姿がコロナ禍とシンクロする偶然に見舞われた。常々、新型コロナウイルスの影響を受けた邦画には、現場の多くの努力が報われてほしいと祈ってきた身としては応援せずにいられない。

人々の行き交うショッピングモールを交差点として、新旧世代のピュアな恋物語が展開する。少年・チェリー(当時14歳の市川染五郎が声優デビュー)は、人から話し掛けられないようヘッドホンをいつも着け、俳句を嗜んで感情を表現している。少女・スマイルは矯正中の前歯を隠すためにマスクを欠かさない。動画を配信しながら外見の劣等感に苛まれ…。そんな不器用な2人が出会い、共通の目的を持った時、物語は畝り始める。

2人には未知の世界にあったレコード。往年のファンには色鮮やかなジャケットが懐かしかろう。想い出を慈しむ心はリリシズムと溶け合い、映画を一層煌めかせる。スケボーのアクション場面は疾走感を産み、小気味よい編集が快適なリズムを刻む。画角を二分割したスマホのような映像デザインも楽しい。イシグロ監督の映像面、サウンドデザインに凝った話法が相乗効果となり、スタイリッシュな魅力を放つ好編である。
(大瀧幸恵)


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2020年製作/87分/G/日本
配給:松竹
アニメーション制作:シグナル・エムディサブリメイション
(C) 2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会
公式サイト:http://cider-kotoba.jp/
★2021年7 月 22 日(木・祝)より新宿ピカデリー他にて全国公開























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