スザンヌ、16歳 (原題:16 Printemps(Seize Printemps))

16281603640220.jpg

監督・脚本: スザンヌ・ランドン 
編集:パスカル・シャヴァンス
音楽:ヴァンサン・ドレルム
出演:スザンヌ・ランドン、アルノー・ヴァロワ、フレデリック・ピエロ、フロランス・ヴィアラ、レベッカ・マルデール

同年代の友人たちに飽き飽きしている16歳のスザンヌ(スザンヌ・ランドン)は、恋への憧れはあるものの、同じ年ごろの異性には惹(ひ)かれなかった。ある日、彼女は通学路にある劇場の前で、年上の舞台俳優ラファエルと出会い心を奪われる。ラファエルもまた、繰り返される舞台や仲間たちとの日々に退屈しており、互いの中に同じものを感じた二人は恋に落ちる。

「ママ、恋をしたの!大人の人なの!」
泣きじゃくる娘に諭すこともせず、ただ抱きしめる母。初めて恋をした激情と興奮、不安、戸惑い、切なくて抑えきれない感情の発露をこれほど率直にエモーショナルな場面として結実させた脚本を15歳の少女が書いたとは…。このような才能を生み出す土壌が、フランスにはあるのだ。
長じて19歳になった昨年、本作の監督と主演を務めたのが、仏の名優ヴァンサン・ランドンの娘スザンヌ・ランドン。名門アンリ4世校を卒業し、パリの国立高等装飾美術学校に入学してから映画製作に着手した。若い才能の登場が高らかに宣言されたことを歓迎したい。

時折、ハッとするほど若い頃のシャルロット・ゲンズブールに似た表情を見せる。スザンヌ監督自身も『なまいきシャルロット』に影響を受け、意識したと語る。一生に一度しかない16歳の夏、パリ・モンマルトル、白いシャツ、ジーンズ、デニムのミニスカート、無造作に纏めたヘア、ノーメイク、ノーブラ。学校生活にも友だちにも退屈を感じていたスザンヌは、物憂げな空気を纏った中年男を劇場前のカフェに見出す。

ドラマらしいドラマはない。多くのモチーフとニュアンスを楽しむ映画だ。舞台俳優の男が「綺麗な色だね」と言った柘榴色のグレナデンソーダ。ストローを共有する躊躇いと羞恥、嬉しさを一瞬で表現するスザンヌが眩しい。

「ラファエル、ナラの木になれ!」前衛的な演技を要求する演出家に付いていけない舞台俳優の男に共感するスザンヌ。
「舞台は退屈だけど、使われる音楽は別だよ」ヴィヴァルディの美しい旋律を聴きながら、2人同じ動きを見せるカフェの場面、誰もいない劇場でスポットライトを浴び、2人で踊るパ・ド・ドゥ。あまりに美しく叙情性に富み、官能的なこの二つの場面はプラトニックな関係にある2人にとって、性の代償行為のようだ。

幾分、生硬な面はあるが可能性を感じさせる19歳が作り出した世界がここに飛翔した。仏映画好き、青春初恋ものが好きな映画ファンには必見の佳編である。
(大瀧幸恵)


16281604671421.jpg

2020年/フランス/77分/PG12
配給:太秦
公式サイト:https://suzanne16.com
★2021年8月21日(土)より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

"スザンヌ、16歳 (原題:16 Printemps(Seize Printemps))"へのコメントを書く

お名前:
メールアドレス:
ホームページアドレス:
コメント: