ショック・ドゥ・フューチャー (原題:LE CHOC DU FUTUR)

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監督:マーク・コリン(音楽ユニット“ヌーヴェル・ヴァーグ” )
出演:アルマ・ホドロフスキー、フィリップ・ルボ、クララ・ルチアーニ、ジェフリー・キャリー、コリーヌ

1978年、パリ。若⼿ミュージシャンのアナは、依頼されたCMの作曲にとりかかっていたものの、納得のいく曲が作れずにいた。ある⽇、アナは偶然、⾒たこともない⽇本製のリズムマシン(ROLAND CR-78)を⼿に⼊れ、その⾳⾊に魅せられる。時はエレクトロ・ミュージックの世界的なブレイク前夜。シンセサイザーやリズムマシン、シーケンサーなどの電⼦楽器が普及し始め、⽇本でもYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)が結成された頃。未来的な⾳の響きに⼼躍らせる⼥性ミュージシャンのアナと友⼈たちをエモーショナルに描く。主演は映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキー(『エル・トポ』)を祖⽗に持ち、ミュージシャンやモデルとしても活躍するアルマ・ホドロフスキー。男性優位の⾳楽業界で奮闘するアナを熱演した。監督は⾳楽ユニット「ヌーヴェル・ヴァーグ」の活動でも知られるマーク・コリン。スロッビング・グリッスル、スーサイド、ディーヴォ、ザ・フューチャーakaヒューマン・リーグなど、70年代後半を象徴する楽曲の数々も聴き逃せない。

本作は、「電子楽器の創生と普及を担った女性先駆者たち」に捧げられている。10数人のアーティスト名が列挙されるが、音楽好きと自認する身でも知らない名前ばかりだった。舞台は1978年のパリである。ダフトパンクが活躍し、世界的な電子音楽のムーブメントが起きたのは1990年代後半。それより20年も前に、宇宙船機器のようなアナログシンセサイザーと果敢に向き合い、次世代の音楽を切り開いていた女性たちがいたのだ。子育て中の時期だったとはいえ、自身の知見の無さを恥じた。

ところで、1978年はゲームマシンの「スペース・インベーダー」が世を跋扈し、YMOの1st アルバムが発売された頃だ。“インベーダー・ゲーム”…、いやはや隔世の感がある。昭和生まれでも「なに、それ?」という感覚だろう。
監督のマーク・コリンは、フランスで音楽活動をしており、‘80年代に少年期を送っている。ジュリー・デルピー監督・主演の『パリ、恋人たちの 2 日間』のサントラも手掛けた人物だ。なぜ、このような題材の映画を製作したのか、興味を持った。
「エレクトロニック・ミュージックをサントラに使った映画はたくさんあるんですが、ある時、ロックやジャズなどと違って、それを演奏する人や作曲する人が、あまりにも描かれていないことに気がつきました。私は電子楽器を使って音楽を作る人が撮りたかったんです。そして特に、電子楽器を演奏する女性が好きなんです」
と語っている。「エレクトロニック・ミュージックの歴史で、ほとんど注目されていないアーティストたちからインスピレーションを受けた」そうだ。

場面の多くは、主人公アナが友だちから借り受けた部屋で進行する。 「ダサい音楽ね」と気だるそうに煙草を吸って 寝そべるアナ。 Tシャツ1枚 の姿でエクササイズをしたり、踊ったり…。電子音楽とヴォーカルが流れ出て、壁一面、というか部屋の大部分を占領したシンセサイザーの膨大な機器を操作するところで、 『ショック・ドゥ・フューチャー』のタイトルが被さる。

訪ねてくるのは、レコード(当時はコレが当たり前!)収集者や、「男は締め切りに遅れないぞ!だから女はダメだ!」と、今ならジェンダー差別的にアウトな言葉で、発注したCMソングが納期を過ぎたことを責める担当者。当時のパリでも⾳楽シーンはまだまだ男性優位の業界だったのだ。
技術者に借りたリズムマシンを使い、アナが作った楽曲に即興で歌詞を当て、「最高だね!バンド組もうよ」と女子的に盛り上がる歌手。観客にとっても、創作の瞬間に立ち会える至福の時間を共有できる。

アナ役は、アレハンドロ・ホドロフスキー監督(『エル・トポ』)の孫であり、モデルや音楽活動もしているアルマ・ホドロフスキー。出演作に『アデル、ブルーは熱い色』などがあるが記憶にない。初めて出会う印象は、美しく先見性があり、力強い。監督がアルマを起用した理由は、ミュージシャンだったことに興味を持ったからだという。今後の活躍に期待したい女優だ。
‘70年代の懐かしい楽曲が多く登場する本作。ド・ストライクの世代には見逃せない映画になりそう。
(大瀧幸恵)


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2019年/フランス/78分/5.1ch/シネマスコープ/DCP/映倫区分G/
配給:アット エンタテインメント
(c) 2019 Nebo Productions - The Perfect Kiss Films - Sogni Vera Films
公式サイト:https://chocfuturjp.com/
★2021年8月27日(金)より、新宿シネマカリテ、渋谷ホワイトシネクイントほか全国順次公開

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